マーケティングの暴走憂う「神様」が説く最新理論 フィリップ・コトラーが提唱「人間中心」とは?
現代のマーケティングの課題とこれまでのマーケティングフレームワークを照らして、最も強化が必要と思われることが3つあった。
①「イノベーションこそ重要だ」という認識が一般的になってきたのに、イノベーションをいかに起こすかという部分が欠落している
②売り上げというモノの市場における交換価値だけで考えているのでは不十分なのに、それでは何をどのように考えるべきかが欠落している
③デジタル化の進展によりマーケティング手段・行動も大きく変わったのに、今後どのように考えるべきかが欠落している
かくして、それらに応えるために以下の3つを柱としたのである。
「創造」こそが、現代の最重要な競争の次元
デザイン思考とはデザイナーの感性と手法で人々のニーズと使用可能資源をマッチングさせ、事業戦略として実行可能なものを顧客価値や市場機会に変換する学問である(IDEOのCEO、ティム・ブラウン)。より具体的には理解→観察→視点の定義→アイデア出し→プロトタイピング→テストを繰り返すユーザー中心の創造の手法である。
デザイン思考が生み出した有名な例としてはAirbnbがある。見知らぬ貸し手と借り手の間に信頼を生み出すためにはどのような情報のやりとりや見え方をデザインすればいいのかを、デザイン思考を用いて徹底的に考え抜いた末、現在あるAirbnbの形にたどり着いたという。それが今ではIBMやバンク・オブ・アメリカのようなエスタブリッシュメントにも用いられて成果を出している。
なぜ今、デザイン思考なのか。かつては高品質・低価格こそが最大の競争力であり、それを生み出したのは最適化の力であった。AIが発展した現代において最適化こそがAIが最も得意とするところである。また、かつてはブランド間の品質差が大きかったが、今や多くのブランドにおいて品質についてはほぼ満足レベルに達しており、さらに品質を極めても大きな価値向上は見込めなくなった。いうなれば製造品質は最重要な競争の次元ではなくなったのである。
「創造」こそが、現代において最重要な競争の次元であり、人間にできてAIにできないことに他ならない。その「創造」の手法の代表格がデザイン思考なのである。もとより消費者のニーズを満たすために商品を開発するのはマーケティングの範疇であったがそれをさらに推し進め、柱の1つに据えたと捉えることができる。
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