マーケティングの暴走憂う「神様」が説く最新理論 フィリップ・コトラーが提唱「人間中心」とは?
ブランドマネジメントにおいては、企業の内側から湧き出るブランドアイデンティティと顧客側から見たブランドイメージの両面をいかに一致させるかが重要であり、その点を強調してH2Hブランドマネジメントではホリスティック(全体論的な)・ブランドマネジメントを提唱している。ブランドを形成するためのデザイン(BFD:ブランド・フォーマティブ・デザイン)という手法と協働的ブランディングという考え方を提唱している。
デザインをも絡めてブランドを作るという手法は、それまでマーケターとデザイナーは職種が分かれていたがゆえにマーケティング目的でデザインをする手法が存在していなかったことを考えると、画期的ではある。また、S-DL時代、すなわち1回の交換で完結しない関係性の時代にあっては、ブランドを形成するための活動は購入時点以上に使用時点が重要なのである。
この「信用」と「ブランド」という2つこそがH2Hマーケティングの「マネジメント」の核であるというのは、当たり前のようでいてとても重要なことである。
昔からProduct Price Place Promotionというマーケティングミックス4Pが有名であり、人々はこれこそがマーケティングのコアであると思っているが、H2Hのフレームでは3層のうち最下層のプロセス層であると位置付けられている。
4Pは時代の変遷を経て7P、 4C、 5V、 8P、 4R、 7P/4S、 SIVA、 4E、 4A、 SAVE、 5E と次々と進化版が提案されてきたが、これについての議論に興味がある方は、『コトラーのH2Hマーケティング』第5章をひもといていただきたい。マーケティングの歴史を概観するのには興味深い議論である。進化の大きなポイントは提供者視点から消費者視点に変わったりブランドを取り込んだりダイナミックプロセスになったり、ということである。
H2Hの5つのステップ
H2Hには5つのステップがある。
①H2H問題を発見する、②深い洞察を集める、③バリュープロポジションを開発する、④価値あるコンテンツで情報・アドバイス・娯楽性を提供する、⑤ネットワークへのアクセスを提供・管理する、である。ここではその中でとくに重要と思われるところを紹介しておく。
まず、②の深い洞察を集める段階の議論で、イノベーションのファジーフロントエンド(最もフワッとした新しいアイデアを産む段階)も明らかにH2Hマーケティングの範囲としていることは特筆すべきであろう。
また、その段階でネトノグラフィー(ネット上の行動観察とインタビュー)とビッグデータと通常のエスノグラフィー(行動観察とインタビュー)によるインプットと思考の反復が、③のバリュープロポジションにつながるという点も重要である。
H2Hマーケティングの3本柱は、S-DL、デザイン思考、デジタライゼーションであり、H2Hマーケティングの3層構造はマインドセット、マネジメント、プロセスである。これは人体に例えると「志」「頭」「身体」のようなものだと考えると理解しやすいのではないかと考える。
マーケティングの歴史をひもとくとマーケティングミックスのようなレベルの議論、信用やブランドのようなレベルの議論、志やマインドセットのレベルの議論が存在しているのを「H2Hマーケティング」という概念で新たに統合し直そうという試みである。
第2回では古今東西の事例をH2Hの枠組みでひもとき、第3回ではH2Hをマーケティングの大きな潮流の中に位置付けたい。
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