国際クルーズ船大手がアジア市場から全面撤退 コスタクルーズ、中国のゼロコロナ長期化響く

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新型コロナの流行以前、中国発着のツアーはコスタクルーズにとって最大のドル箱だった(写真は同社の中国向けウェブサイトより)

国際クルーズ船大手のコスタクルーズが、中国を含むアジア市場から全面撤退することがわかった。財新記者が複数の関係者から入手した情報によれば、同社は中国、香港、台湾、シンガポール、日本、韓国などの社員に対して、業務停止の決定をすでに通知した。

コスタクルーズのアジア撤退の背景は、最大の市場である中国で新型コロナウイルスの流行を封じ込めるための厳しい行動制限が続き、クルーズ船の運航再開が見通せないことだ。同社が東アジアに配置する4隻の大型クルーズ船は、新型コロナ発生前の2019年には中国の港から発着するツアーが航海期間の3分の2を占め、大勢の中国人乗船客で賑わっていた。

同社が中国市場から撤退する兆しは、すでに昨年から現れていた。2021年10月、コスタクルーズは中国市場向けに情報発信していたSNSの公式アカウントの更新を停止。業界情報に詳しい中国の旅行サイトの関係者によれば、コスタクルーズの中国地区責任者を務めていた葉蓬氏は昨年のうちに退社し、多くの従業員が後に続いたという。

カーニバル系の食い合い回避も

コスタクルーズは1860年にイタリアのコスタ家が創業した老舗企業だ。同社は1996年、クルーズ船世界最大手のカーニバルの傘下に入った。カーニバルは現在、国際クルーズ船の市場全体の4割を握っている。

新型コロナの世界的大流行が始まるまで、国際クルーズ船の市場ではアジア太平洋地区の乗船客数が世界全体の6割近くを占めていた。なかでも中国の伸びが目覚ましく、2018年の乗船客数は延べ219万人とアジア全体の半分に上った。

本記事は「財新」の提供記事です

業界関係者の一部は、コスタクルーズの中国撤退の裏には新型コロナの影響以外の理由もあると見ている。それは、カーニバルの傘下企業同士による需要の食い合いを避けることだ。

カーニバルは2018年、中国の国有造船大手の中国船舶集団(CSSC)と手を組み、合弁会社CSSCカーニバル・クルーズ・シッピングを発足させた。その狙いは、同社を中国のクルーズ船業界の旗艦企業に育てることにあると見られている。

(財新記者:李蓉茜)
※原文の配信は10月24日

財新 Biz&Tech

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