画面の中の「乗れないクルマ」が売れると言える訳 メタバースで「クルマがファッション」になる日

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NFT×メタバースで若者への訴求を図る(写真:現代自動車)

自堕落な日々を過ごしている主人公が、日々の憂さ晴らしのために、路上駐車しているメルセデス・ベンツのエンブレムを盗み取る。その行為が発端となり物語が動き出す――。

人気マンガ『賭博黙示録カイジ』(福本伸行)の冒頭は、こんなシーンで始まる。仕事に就かず困窮しながら非生産的な日々を送るカイジと、高級車メーカーであるメルセデス・ベンツ、加えて高級車を所有できる人々の対比を描いたシーンだ。

ここで重要なのは、メルセデス・ベンツという誰もが「高級車だ」とわかる、ブランド力のあるクルマが描かれていることにある。

メルセデス・ベンツのエンブレム(写真:Mercedes-Benz)

コモディティ化(一般化)が進んだマーケットでは、ブランドのもたらす価値が重要だ。

メーカーにかかわらず、“そこそこいいもの”がリーズナブルな価格で手に入るようになると、モノ選びにはブランドが持つイメージや世界観、歴史・伝統・哲学が重んじられるようになる。特にクルマや家電製品のような耐久消費財、アパレルといったブランド展開が豊富な市場で、その傾向は顕著だ。

ファッションとしてのクルマ

クルマもアパレルも「ファッション性がある」という点で共通しており、機能性だけでなく、デザイン性やブランド性で選ばれる。

クルマも、自らのライフスタイルや志向と表現するファッションの1つとして捉える人は多い。そこで、今回は「ファッションとしてのクルマ」という切り口で、メタバース時代の“ブランドの重要性”を考えてみたい。

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「メタバースとクルマ」にフォーカスするとき、メタバースをどう捉えるかで考え方は大きく2つにわかれる。

1つは「リアル=主/メタバース=従」という、メタバースをリアルマーケットに向けた接点と捉える考え方。もう1つは「メタバース=主/リアル=従」で、メタバース内単独で売り上げ・利益を得ることを狙う動きだ。

前者については「メタバースが『車のデザインを変える』は本当か」で示したように、新車のデザイン開発に活かせる見込みがある。今回は、後者の「メタバース=主/リアル=従」を考えていく。

次ページ「リアルからデジタルへ」シフトするファッション市場
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