画面の中の「乗れないクルマ」が売れると言える訳 メタバースで「クルマがファッション」になる日

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リアルな世界と異なり、メタバースの中では移動に時間を要さない。人々が集まる部屋のような概念である“ワールド”間の移動は、ロード時間のみだ。スマホでウェブサイトやSNS、YouTubeチャンネルを行ったり来たりするイメージに近い。

移動に時間を要さなければ、「メタバースの中でクルマはいらない」と思われるかもしれない。たしかに、移動手段としてのクルマは不要だ。しかし、メタバース内でもクルマの需要は十分にあると考えている。それは「ファッションアイテムとしてのクルマ」だ。

マクラーレンはゲーム「Gran Turismo」のために作ったバーチャルカーを実車化した(写真:McLaren Automotive)

そもそも“要/不要”という点では、メタバース内は寒いわけでも暑いわけでもなく、着替える必要もない。それでも、プレイヤーはさまざまな洋服に身を包み、髪型や顔の造形まで自在に変えられる。

こういった行動はメタバースだけでなく、一般的なオンラインゲームでも同様で、ゲームプレイヤーの間ではすでに一般化している。ゲームのやり方がわからない子どもでも、服装やプロフィール画像をカスタマイズできることを知ると、夢中で着せ替えを行う。

これはまさしく“ファッショナブルな姿”を目指した行動で、「自分がどうありたいか」「他者からどう見られたいか」を自由に表現しているわけだ。

メタバースなら“本当に好きなもの”を身につけられる

メタバースがオンラインゲームの中で身につけるファッションアイテムは、有料化されているものも多い。ゲームメーカーや運営企業は、このアイテム販売で収益をあげている。

有料アイテムのほうがデザインに優れていたり、インパクトの大きいビジュアルであったりするため、お金を出してでもほしくなるわけだ。加えて、「それが有料アイテムであること」を他者へ顕示できる点も、プレイヤーの価値観上、重要となる。

『Fortnite』での有料アイテムの一例(写真:Epic Games)

現実世界では「暑いから通気性のいいジャケットを」「少し体重が増えてきたからストレッチの利くパンツがいい」といったように、洋服に機能性が求められる。また、出先の場所や立場に合わせて制服を着たり派手な柄を避けたりと、自由度が高くないシーンも存在する。

それがオンラインの世界では、季節や場所を問わず“本当に好きなもの”に身を包むことができるわけだ。まさに、ファッションの根源が示されていると言えるだろう。

これは、クルマにあてはめても同じで、スポーツカーがほしくてもライフスタイルからスライドドア車に乗る人もいれば、経済的な理由からほしいクルマを諦めざるをえない人もいる。しかし、メタバースをはじめとするオンライン空間では、これらの制約を取っ払って“本当にほしいクルマ”を選ぶことができる。

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