画面の中の「乗れないクルマ」が売れると言える訳 メタバースで「クルマがファッション」になる日

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メタバース内でクルマがファッションとなることは、ゲームをしてきた人であれば違和感のないことだろう。これまでも、さまざまなゲームの中でTシャツやスニーカー、カバンなどのファッションアイテムに加え、クルマやバイクもゲーム内のショップで販売されてきたからだ。

これは、アバターに着せる上着もクルマも、“ゲーム内通貨で購入可能なアイテム”としていっしょくたに捉えられていることを意味する。

『荒野行動』ではクルマがアイテムとして取り扱われる(写真:NetEase)

よく考えてみれば、アパレルショップやカーディーラー、眼鏡屋、美容室などが1カ所に集まっているゲームの中でなかなか不思議な状態であるが、ゲームプレイヤーには当たり前のこととして受け入れられている。

クルマがファッションアイテムとして扱われるようになると、乗り心地や走行安定性などは問われない。アイテムとして意味を持つのは「ブランド」だ。

冒頭で示した『カイジ』のように、エンブレムに価値がある。よって、自動車メーカーが他社との競争に勝つためには、機能軸での差別化だけでは不十分であり、ブランド力に差をつけ、ブランドを売る企業になる必要がある。

メタバースでクルマどう売るか?

では、これから自動車メーカーがメタバースの世界に活動範囲を広げていったとして、問題となるのはなんであろうか。答えは「マネタイズ」である。そして、マネタイズのためには、2つの方法が考えられる。

1つは「一般の有償アイテム」としてクルマを販売する方法だ。単にアイテムを販売するだけではもったいないので、リアルな世界での新車開発やモデルチェンジの方向性などを確認するためのテストマーケティングの場として活用するのも有効だろう。

もう1つは、一般の有償アイテムよりも特別なアイテムとして販売する方法である。具体的には「NFT」として販売するものだ。NFTとは「Non-Fungible Token:非代替性トークン」の略であり、ブロックチェーン技術が根幹となり、「デジタル上のそのアイテムを購入したのは自分だ」と証明することができるものである。

実例として、音楽家の坂本龍一氏が代表作の1つである『Merry Christmas Mr. Lawrence』の音源を1音ずつに分割し、NFT化して販売したことが挙げられる。「私は1小節目のこの"ファ"の音を買った」という事実を証明することができ、ファンにとっては垂涎ものとなる。

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