日本に多い「好きな事が見つけられない人」の盲点 自分の中に眠っている「好き」を発掘するには
彼はもともと私のクライアントで、自分の今後のキャリアというテーマをセッションの場に持ち込んでいました。税理士の仕事を続けていくことに違和感があったものの、何か明確に次が見えていたわけではありませんでした。
ある時、落語に興味があるという話が出てきたことがあります。コーチングでは、本筋と一見関係ないように見えることの中に、これからのヒントがあるということが多々あります。真面目なキャリア相談であればあまりにも突拍子もない話ですが、今思えば「好き」の兆しだったのかもしれません。
「なんか、やってみたい」
そう感じ、彼は行動に移します。最初は代々木公園で自分の知り合いに声をかけて、つたないながら初めて落語を披露しました。内容的には未熟だったかもしれませんが、このちょっとした行動が「好き」を育む第一歩になりました。頭で理解するのではなく、心や体で「何かいいかも」という感覚を得たのです。とにかく場数を踏んでみようと思い、老人ホームでボランティア落語をするなど挑戦の場を広げていきました。
そうしているうちに、彼の周りの人たちから、「相続問題」を落語で伝えてみたら?と声をかけられる機会が増えたと言います。これがきっかけとなり、現在の「相続落語」がスタートします。
すぐに生活していけるだけの仕事になるわけではありませんが、興味を持った企業などで相続落語を披露する機会が徐々に増えていったのです。「なんか、やってみたい」で始まった落語。10年たった今では、彼の肩書きになっています。
初めから「10年これで行こう」とは思っていなかった
これは、1つの事例にすぎませんが、ここで強調したいのは彼がビジネスで成功したということではありません。落語が初めから「向こう10年これで行こう!」という運命的なものでも、すぐに仕事に結びつくものでもなかったということです。「まずやってみよう!」という好奇心から一歩を踏み出す。湧き立つ興味を押しとどめることなく解放する。そうしたステップが、彼の運命を変えたのです。
私はクライアントの人生を熱烈に応援する、コーチという仕事をする中で、クライアントが「響いているかどうか」を見ています。響いているというのは、別の言葉で言えば「心が動く」「喜びがある」「生きている実感がある」ということです。
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