東大合格者速報!中高一貫校が強い理由 15年高校別ランキングと「いい学校」の条件

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たとえば、灘(兵庫県)。私立中高一貫校としては珍しく週5日制で授業時間数が少ない。その代わり土曜日には「土曜講座」が開催される。そこではたとえば、「ギリシャの三題作図不可能問題」といわれる数学の問題について、折り紙を使って解くというようなアカデミックな講座が実施される。

麻布(東京都)も同様に、土曜日に「教養総合」を開催する。そこではたとえば、「うさぎ追いし、かの山……」で始まり日本の原風景を表現する唱歌「ふるさと」の4番を作詞する。「現在の日本の原風景とは何か?」という問いである。高層ビルの夜景について、「その中には過労死寸前にまで働いている人たちがいることを考えれば、美しくは見えない」などと、辛辣なメッセージを含む歌詞が登場したりもする。

女子学院(東京都)では「聖書」の時間に、キリスト教の歴史のみならず、世界中の宗教や哲学・思想の変遷についても学ぶ。昨今の世界情勢についても、もちろん触れる。まさにユニバーサルな教養を身につけられる。その知識を礎に、2泊3日の討論合宿を開いたりもする。

「本物に触れる教育」を旨とする武蔵(東京都)では、たとえば地学の時間、鉱石のサンプル作成に膨大な時間をかける。既製品を買ってしまう代わりに、半年以上、ひたすら鉱石を研磨剤で磨き、顕微鏡で見るためのプレパラートを自作するのだ。そのプロセスの中で、一生忘れない、科学者的な感覚を身につける。

詳しくは拙著『名門校とは何か? 人生を変える学舎の条件』(朝日新聞出版、税抜860円)に記した。

「スキル」より「教養」を身につける教育が重要

「即戦力」を重視しすぎた教育は危険な面もある(写真:KAORU / Imasia)

最近、政府の教育再生実行会議は、アカデミックな教育課程に偏りがちな大学を変革し、産業界が求める「即戦力」となる人材を育てることを首相に提言した。「教養などいらない」と言っているわけではなかろうが、舵取りを誤れば危険だ。

大学生が職業に直結するスキルを身につければ、企業にとってはたしかに「即戦力」になる。しかしスキルはすぐに陳腐化する。だから社会人になっても「学び直し」ができる制度も整備するという。新しいスキルを随時学ぶことができるようにするのだ。

一見すばらしいが、まるでスマホのアプリを更新する仕組みのようにも見える。不具合が目立ってきたら更新する。いつまでもそうやって、「与えられる」スキルによって生きていくしかない。受動的である。更新サービスが打ち切られたら、おしまいだ。

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