東大合格者速報!中高一貫校が強い理由 15年高校別ランキングと「いい学校」の条件

拡大
縮小

一方、教養を身につけるとは、自分自身で感じて考えるための素材を豊富に持っているということである。「これからはこんなスキルが必要か」を自分で考えることができる。さらに「どうやったらそのスキルを身につけることができそうか」も自分で見いだすことができる。「与えられる」のを待たなくていい。自立的に成長できるようになる。

教育とは、スマホのアプリのようなスキルを子どもに与えることではない。自分で自分を育てていく能力の開発、すなわち教養を育てることこそが、教育の要諦だ。そのことは文部科学省自身も「生きる力」として認めているはず。産業界だって、スキルをインストールされるのを待っている人材よりも、時代に応じて柔軟に自立的に成長してくれる人材のほうが欲しいはずだ。それなのに、言っていることとやっていることがちぐはぐなのである。

「人材育成」と「教育」は似て非なるもの

『名門校とは何か?』(朝日新聞出版)人気シリーズ『男子校という選択』『女子校という選択』『中学受験という選択』『進学塾という選択』の筆者が、全国有数の名門校を徹底的に取材し、学校とは何か」「教育とは何か」というテーマに迫った新刊 

学校での「即戦力」育成は、日本の産業界の積年の望みだ。特に経済が急成長した時期には必ずといっていいほど「実業学校」というような構想が登場している。しかし長続きはしない。結局、世の中のニーズがないのである。

今すぐに必要とされるスキルを与えることに主眼を置いた「人材育成機関」が登場することに反対なのではない。むしろ多様な学びの場のひとつとしては歓迎したい。そういう学びの場が増えることで、結果的に大学が減るのであれば、それは仕方がない。

しかし教養を受け継ぐ場として進化してきた大学を、意図的に「人材育成機関」に置き換えてしまったら、社会的損失は計り知れない。あとから元に戻そうとしても取り返しはつかない。学校はコンピュータやロボットのようなものではなく、生き物であるからだ。一度切り倒してしまった大木を蘇生できないのと同じだ。

「人材育成」は目的ありき。「教育」は子どもありき。2つは似て非なるもの。それらを峻別せずに進められる議論は危険である。

おおたとしまさ 教育ジャーナリスト

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

Toshimasa Ota

「子どもが“パパ〜!”っていつでも抱きついてくれる期間なんてほんの数年。今、子どもと一緒にいられなかったら一生後悔する」と株式会社リクルートを脱サラ。育児・教育をテーマに執筆・講演活動を行う。著書は『名門校とは何か?』『ルポ 塾歴社会』など80冊以上。著書一覧はこちら

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT