「サッカー代表専属シェフ」が挑む集大成のW杯 5度目の帯同、選手を支える食事作りの裏舞台

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1000m以上の高地が試合会場となった南アフリカの時は鉄分の多いメニューを取り入れるなど、環境に合わせた工夫も凝らしている。さらに、選手によってはグルテンフリーを取り入れていたり、好みにこだわりもあるため、それにも対応しなければいけない。多彩なスキルや手際のよさが求められてくる。

「代表には長友さんのように意識が高く、知識も豊富な選手がいる。長友さんは『青魚をちょっと多めに出してほしい』『揚げ物に使う油は新しいものを使ってほしい』と要望を伝えてくることがよくあります。年齢的な部分もあるんだと思いますが、疲労をため込まないために食事に物凄く気を使っているのがよく分かります」と西さんも神妙な面持ちで語る。

代表シェフへの要求レベルはやはり想像以上に高い。それをこなせる人材はそうそういないのである。

カタールは豚肉持ち込み禁止

2022年W杯開催地・カタールはイスラム教国ということで、豚肉が持ち込めない。試合当日に提供するカレーは通常、豚肉が必須だが、今回は違った食材を使わざるを得ない。

「豚肉はビタミンB1、B12の含有量が高いので、それが含まれている牛や鳥のレバーを使う予定です。ラムもあるので、それも含めて考えます。一番好評なのはポークカレーなので残念ですけど、『練習や試合から帰ってきて食事だけが楽しみ』という声を聞くので、おいしい食事を出して、テーブルが賑やかになり、雰囲気がよくなるようにしないといけないと思っています」と本人は意欲満々だ。

長年にわたる代表帯同の中で、最も苦労したのは、2011年11月の北朝鮮遠征。通常だと必要な食材は事前に送ったり、持ち込んだりしているのだが、同国はそれが一切禁止。平壌で入手できる材料で作るしかなかった。しかも米は古古米。味が落ちるのはやむを得なかったが、何とか選手たちの活力になるようなメニュー作りを最大限心がけた。

逆に一番嬉しかったのは、2010年と2018年のベスト16進出。特に前者の時はこんな声をかけられたという。

「監督の岡田(武史=現JFA副会長)さんやアベちゃん(阿部勇樹=JFAロールモデルコーチ)、(田中マルクス)闘莉王さんに『西さんのご飯のおかげで勝てました』と言われました。あの時は嬉しかったですね」と12年前の歓喜の瞬間を改めて振り返っていた。

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