「サッカー代表専属シェフ」が挑む集大成のW杯 5度目の帯同、選手を支える食事作りの裏舞台

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今回の森保一監督率いる日本代表の目標は当時や4年前を超えるベスト8。16強の場合は4試合で大会が終わるが、それより上のステージまで勝ち上がるとなれば、試合数も活動日数も自ずから増える。となれば、西さんの料理への期待値も一層、高まってくる。そこで自身の腕を振るい、日本の史上最高成績達成に貢献し、有終の美を飾るというのが、彼の描く理想的なシナリオだ。

「いつの間にか5回目のW杯になったというのが率直なところです。年齢も還暦になりましたし、今回で代表の専属シェフは最後にしようと思っています」と本人はしみじみ言う。

その言葉通り、本当に引退するかどうかはまだ未定のようだが、西さん自身は「集大成」のつもりでカタールへおもむく覚悟だ。

今年3月の最終予選の大一番・オーストラリア戦(シドニー)の際、選手からプレゼントされた赤いちゃんちゃんこを着て、試合当日の作業するという西さん。11月23日の初戦・ドイツ戦後には、縁起のいい衣裳を身にまとって作られたカレーを選手たちが笑顔で食べることになれば最高だ。

百戦錬磨のシェフの力も借りながら、日本代表選手たちはベストパフォーマンスを追求し続けていくことになる。1993年に悲劇が起きた因縁の地で「ドーハの歓喜」を味わえるように祈りたいものである。

元川 悦子 サッカージャーナリスト

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もとかわ えつこ / Etsuko Motokawa

1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、1994年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。著書に『U-22』(小学館)、『初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅』『「いじらない」育て方 親とコーチが語る遠藤保仁』(ともにNHK出版)、『黄金世代』(スキージャーナル)、『僕らがサッカーボーイズだった頃』シリーズ(カンゼン)ほか。

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