「サッカー代表専属シェフ」が挑む集大成のW杯 5度目の帯同、選手を支える食事作りの裏舞台

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福島県南相馬市生まれの西さんは、地元の高校卒業後、上京して京懐石料理店で修業を積み、1997年にオープンしたサッカーナショナルトレーニングセンター「Jヴィレッジ」のレストランで総料理長に。それがきっかけで代表と関わりを持つようになった。

1998年秋~2002年日韓W杯まで指揮を執ったフィリップ・トルシエ監督時代は当地で代表合宿が頻繁に行われたが、西さんが作ったすいとんをトルシエ監督が「故郷のおばあちゃんの味」と評し、「マミーすいとん」と命名したほど。名料理人の存在は当時からサッカー関係者の間で広く知られており、ジーコジャパン時代から正式に専属シェフとして海外遠征に帯同。それから18年経過している。

試合当日はカレーが定番

日本代表の専属シェフとして5度目のW杯にのぞむ西芳照さん(筆者撮影)

「代表活動時の1日の流れは、朝食スタートが8時なので、2時間前の6時に起床し、準備を始めます。オムレツや目玉焼きは彼らの目の前で焼いて提供します。選手・スタッフの食事が全て終わるのは10~12時半。ランチは13時頃からなので、朝食の片付けの後、すぐに準備に取り掛かります。

ランチが15時頃終わると、夕食を20時から始められるように動きます。その時間帯が少し休める時間ですね。そして夕食が終わるのは22時半頃。その後、翌日の仕込みをして、シャワーを浴びて寝る感じになります。

試合はほとんど見られないです。テレビで中継していれば前半くらいは様子をチェックすることもありますけど、後半は料理を仕上げているのでまともには見られないですね」と超ハードなスケジュールを明かす。

1日に炊く米の量は、朝食分だけで雑穀米と白米をそれぞれ2升5合(約3.75キログラム)。昼にも若干追加し、夜も再び2種類の米をほぼ同量炊くというから、1日の総量は17~18キログラムにものぼる。それもあくまで米だけの話だから、他の作業を含めれば、休む暇もないはず。シェフの仕事がいかに重労働かよく理解できるだろう。

それでも、西さんは事細かくメニューを決めることなく、臨機応変に対応していくのが常。決まっているのは、試合当日のカレー、前夜のウナギ、前々夜日の銀だらの西京焼き、その前夜のハンバーグくらい。あとは食材や選手の顔、様子を見ながら作るというのだ。

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