出産クーポン「的外れにも程がある」と言える根拠 低出生率は「産み控え」によるものではない

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「産み控え」は本当に起きているのでしょうか?(写真:プラナ/PIXTA)
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10月中旬にマスコミ各社で報じられた「出産(子育て)クーポン」のニュースが大きな波紋を呼んでいます。

報道によれば、政府は10月末にまとめる総合経済対策の一環として、0~2歳児のいる世帯を対象として、一定額のクーポン(子ども一人当たり10万円相当のクーポン、もしくは自治体判断により現金)を所得制限なしに支給するというものです。この案は、元々東京都が2021年から始めた「赤ちゃんファースト」など自治体独自でやられていた事業をそのまま全国に横展開したいという考えのようです。

加えて、単発ではなく、来年度以降も継続的に実施する方針であることが後から追加公表されました。

ですが、SNS上では「クーポン配られたくらいで子どもをもう1人産もうなんて考えるか!」「所得制限ないけど今度は年齢制限かよ。3歳以上の子どもは見捨てるのか!」「なんでわざわざクーポンなのか?現金配るより余計に無駄な事務局経費がかかるだけじゃないのか」など、批判の声が殺到しました。いちいちごもっともなご意見だと思います。

あちらでは所得制限、こちらでは年齢制限

子育て支援策として、妊婦や新生児のいる世帯を対象として何らかの給付をするということそれ自体は否定しません。実際、東京都の事業で助かったという世帯も多いでしょう。

しかし、だったらそもそも今までの児童手当の所得制限による給付停止などしなければよかったのではないでしょうか。あちらでは所得制限、こちらでは年齢制限などとわざわざ複雑化することの意味がわかりません。

そして、それよりも私が大いに疑問に感じるのは、「想定を上回るペースで少子化が加速しており、新型コロナウイルスの流行長期化や将来不安から『産み控え』が起きているため」と毎日新聞などが報じたこの政策そのものの狙いの部分です。狙いがそこにあるということは、これは「子育て支援」というより「少子化対策」ということなのでしょうか?

だとすれば、的外れにもほどがあるといわざるを得ません。

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