出産クーポン「的外れにも程がある」と言える根拠 低出生率は「産み控え」によるものではない

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昨今、政府の少子化対策白書の中にも「若者の婚姻支援」というものの重要性にフォーカスが当たり始めていますが、では、今から婚姻を増やせば少子化は解決できるかといえば、残念ながらそうはなりません。

なぜなら、もはや、婚姻対象となる若者人口自体が減っているからです。皆婚時代の1985年の15~39歳の女性人口総数は国勢調査ベースで約2212万人。2020年は約1594万人です。約3割も減っています。

初婚数は、1985年は65万6609組、2020年は43万7169組と、これも33%のマイナスです。数字の辻褄はあっています。出産可能なそもそもの女性人口が減っている以上、婚姻が減るのは当然で、婚姻が減るから出生が減るのも当たり前の道理なのです。

この年代の人口総数が少ないのは、彼女たちが生まれた1990年代以降に、本来到来するはずだった第3次ベビーブームが起きなかったことによります。

バブル崩壊後とあわせてその後の「給料があがらない時代」という経済環境や、お見合いなどの結婚の社会的システムが消滅し、自由結婚といえば聞こえはいいですが、基本的に恋愛弱者たちが結婚できなくなる時代へ突入しました。あわせてセクハラ裁判などの影響により職場結婚も減少し始めた頃です。

2020年の生涯未婚率が過去最高といいますが、その対象者はまさに1990年代にもっとも結婚するはずだった20代の若者でした。言ってしまえば、今の出生数の低下はもろもろ1990年代に確定された未来が表出しただけにすぎないのであって、突然ふってわいた危機でもなんでもないわけです。加えて、今後はますます婚姻が減るかもしれません。若者の未婚化・非婚化が進んでいるからです。

結婚したいけどできない現実

これが、若者が自分の意志で「あえて結婚しない選択」をしているとするならばそれはそれで尊重すべきことですが、実態は違います。

「不本意未婚」結婚したいのにできない若者の真実』の記事でも書いた通り、2015~2019年においては、結婚したいと希望する20~34歳の若者の6割しか結婚できていないという現実があります。そこには、若者の給料や雇用に絡む経済的不安要素が大きいことは否めません。子育て支援と同様にこの若者の支援にも目を向けていただきたいものです。

繰り返しますが、結婚した夫婦は、1980年代と変わらず子どもは産んでいます。「産み控え」どころか、経済環境が苦しい中でも若い夫婦は、生まれてきた子どもたちの未来のために頑張ろうとしています。

未婚化を「若者の草食化」のせいにしたり、低出生率を「産み控え」のせいにしたりするのではなく、結婚や出生が増えない根本的な要因と事実にしっかり向き合って、何が目的なのかを曖昧にせずに的確な政策の立案と実施が求められていると思います。

減り続ける人口はどうにもなりませんが、だからこそ、今いる数少ない子どもたち及びこれから結婚も含め未来ある若者に対する支援を真剣に考えるべきでしょう。それは、決してバラマキやクーポンなどで「何かやりました感」を出しただけで、問題の本質から目を背けてしまうことではないと思います。

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荒川 和久 独身研究家、コラムニスト

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あらかわ かずひさ / Kazuhisa Arakawa

ソロ社会および独身男女の行動や消費を研究する独身生活者研究の第一人者として、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌・Webメディアなどに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』(小学館新書)、『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』(ぱる出版)、『「一人で生きる」が当たり前になる社会』(ディスカヴァー携書)(ディスカヴァー携書)、『結婚滅亡』(あさ出版)、『ソロエコノミーの襲来』(ワニブックスPLUS新書)、『超ソロ社会』(PHP新書)、がある。

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