「がんを告知された人」の苦痛を取り除く緩和ケア 「医療用麻薬」は“末期"に限らず使用できる

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身体的苦痛:痛み、だるさ、息苦しい、日常生活動作の支障
社会的苦痛:仕事上の問題、家庭内の問題、経済的な問題
精神的苦痛:不安、恐怖、怒り、孤独感、うつ状態
スピリチュアルペイン:人生の意味、自責の念、死生観に関する悩み

これらの苦痛は相互に関連しており、つらさを軽減するためにはひとつの側面だけでなく多面的なケアが必要といえます。

これらすべてのつらさを同時に軽減することは難しいですが、がん患者の7割以上は身体の痛みを経験しており、まずは身体的苦痛を和らげることが効果的であるといわれています。がんの疼痛はゼロにすることは難しいものの、軽減が可能です。確かに、症状のひどい方は鎮痛薬を飲んでもすぐに痛みがぶり返します。薬を飲む間隔が何時間おきと決まっているため次の薬まで痛みを我慢せざるをえず、長期間つらい思いをしている方もいらっしゃいます。

がんだから痛みは仕方ない?

しかし、このような方々はがんにかかっているのだから痛みは仕方ないと医師側とのコミュニケーションを諦めて痛みを相談していないケースもあり、医療用麻薬という選択肢が残っている場合があります。医療用麻薬は他の鎮痛剤よりも効果が高く、痛みの強いときにいわゆる頓服で使用すること(レスキュー)が可能です。

ただ、いくら医療用と説明されても、やはり麻薬と聞くと抵抗感を覚える方は少なくありません。副作用の強さや依存性への心配に加え、麻薬を使用することで寿命が短くなる印象を持つ方もいらっしゃいますし、麻薬を使うほど自分は末期なのだと思われる方もいます。しかしこれらのイメージはすべて誤解です。まず副作用はどの薬にも存在し、医療用麻薬にも悪心・嘔吐、便秘、眠気といった副作用が確かにありますが、これらの症状を対策できる薬も一緒に処方されるほか、症状も数日〜数週間で消失することが多いとされています。

また、医療用麻薬の使用によって予後(疾患による残りの寿命)に違いはなく、がんの進行度ではなくその人自身の痛みに応じて使っていくものです。

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