社員の意識を変えた「しくじり社長」の面白失敗談 失敗を茶化して弱みを見せることのすごい効果

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さらに、心理学者のダン・マカダムズは、人は自分自身に語って聞かせる物語そのものだけでなく、そのジャンルや構成も含めて、みずから「物語(ナラティブ)の選択」をしていると主張している。

マカダムズの専門は「ナラティブ・アイデンティティ」、すなわち個人の心のなかで再構成した過去と、現在と、想像した未来を組み合わせて紡がれる物語のことだ。

みずからが語るナラティブを少し見つめ直すだけでも、「悲劇的な物語」が「コミカルで愉快なエピソード」に思えてくるし、物語に少し手を加えるだけでも、人生に大きな影響が表れるとマカダムズは考えている。

言い換えれば、私たちはほとんどの場合、自分の失敗をどう位置づけるか――悲劇か、それとも喜劇か――を選ぶことができ、それによって、失敗が人生に及ぼす影響が変わってくるということだ。

笑い話にすることで失敗を認めやすくなる

また、自分の失敗を笑い話にすることは、自分の心理状態をコントロールするための強力なツールとなるだけでなく、まわりの人たちも安心して失敗を認めやすくなる。

私たちの元教え子で、メキシコのモンテレイ工科大学で研究助手として働き始めたジャンの例を見てみよう。

ジャンのチームはある種の藻類の発酵過程を理解するため、数か月に及ぶ実験の真っ最中だった。

高額の費用をかけて、大規模なバイオリアクター〔微生物や酵素を触媒として、物質の合成・分解・変換などを行う装置〕を使った発酵過程の試験を実施したあとで、研究助手たちは、サンプルが汚染されていることに気づいた。つまり、実験全体が台なしになってしまったのだ。

汚染の大部分が人的ミスによることを考えれば、これは自分たちのミスだと、チーム全員がわかっていた。失望と不安を抱えながら、彼らはこの研究の顧問を務める博士のもとへ、悪い知らせを伝えにいった。

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