池袋や渋谷の「公園」で起きている画期的な変化 「南池袋公園」「ミヤシタパーク」はなぜ凄いのか

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公園は4階の屋上部分に追いやられた感があるが、屋上にあることで、人々であふれかえる渋谷駅周辺では貴重な「開放感」を提供している。(子ども遊具ではなく)ストリートスポーツやイベントに対応した施設が整備されており、居心地と利便性に優れた公園になっている。ミヤシタパークも間違いなく、渋谷の魅力化に寄与したと言えるだろう。

ミヤシタパーク(写真:筆者提供)

従来の公園は、基本的に公共=行政が管理することを前提とし、公共財として最低限の維持管理をするという「公物管理」というスタンスだった。つまり「誰にも、何にも使われない」公園ばかりという状況だった。

ところが2004年に地方自治法が改正され、公園の指定管理者制度による維持管理の民間委託が進んだ。さらに行財政の悪化を受けて、2017年からはPark-PFI(P-PFI)事業が導入された。P-PFIとは、飲食店や売店などを公園に設置・運営する民間事業者を公募で選定する制度のことを指す。この導入により、公園に併設する飲食店や売店における「集客力」も大きな要素となった。

集客力が見込まれる整備手法としては、2004年に創設された立体都市公園制度も例として挙げられる。立体都市公園制度は、民間の施設と公園を一体的に整備できる制度だ。前出のミヤシタパークのように、建物屋上を公園にしたり、横浜のアメリカ山公園のように、増改築した駅舎上部を公園区域にしたケースがある。

このように整備や管理を担う行政側は、財政負担を軽減するためにさまざまな民間委託制度を創設し、委託期間を長期化することによって、より整備水準の高い環境整備を図っている。

ただし「整備や運営の民間委託」ばかりが先行しすぎると、「公園なのか?ショッピングセンターの中庭なのか?分からない空間」になってしまう危惧もあり、公園のパブリック性の担保は喫緊の課題だといえよう。

次世代公園の方向性とは

さて次世代の公園には何が望まれるだろうか。10万カ所あると言われる都市公園の8割を占める小規模な街区公園では、周辺コミュニティーを中心とした運営が望ましい。しかし残りの約2万カ所の比較的大規模な街区公園では、都市全体の魅力化に向けて、より積極的な活用が望まれる。

都市全体の魅力化に向けた公園を検討するために、「公園とテーマパークとの違い」を整理してみると、無料⇆有料、利用者が主体行為⇆鑑賞行為という整理軸が設定される。

近年の動向として、より高度な環境ニーズへの対応が求められ、その整備・維持のためには、「一定程度の有料事業の並存」も必要となるだろう。また主体と鑑賞との中間にあたる「半主体的な関与」という領域も想定する必要がある。

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