半世紀「猪木」を撮影したカメラマンが目撃した物 新日本プロレス旗揚げ直後に薄暗い体育館で激写

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ガウン姿の猪木、リング上でファイトする猪木、コーナーに控えている猪木、インターバル中の猪木——。それらを追うことに集中していたため試合内容はそれほど詳しく憶えていないが、私の目の前で猪木が飛行機投げを見せたシーンは鮮明に記憶している。最後は猪木がドランゴから卍固めでギブアップを奪ったものの、残念ながら私の場所からは裏(背中側)だった。

試合は60分3本勝負で、結果は日本側が2‐1で勝利。改めて記録を見直すと、試合時間はトータルで30分弱もあり当時の地方興行としては意外と長かったが、私の中ではもっと短いタイムで試合終了のゴングが鳴ったような感触がある。

数日後、乾かしてあった自分のフィルムを見た。どうにか画像はネガに残っていた。引き伸ばし機は家にあったので、自分で印画紙に焼き付けた。

「ああ、こういう風に写るんだ…」

最初にしては、ちゃんと写っていただけでも上出来だろう。

新人だった栗栖正伸がかけてくれた言葉

旗揚げ当初の新日本プロレスはテレビ中継がなかった。猪木の試合を見るなら、会場での生観戦しか手段がない。そこで友達と一緒に向かったのが冒頭で記した1972年3月23日、茨城県立スポーツセンターでの『旗上げオープニング・シリーズ』第8戦だった。

この年の9月16日、新日本プロレスが茨城県の土浦スポーツセンターに来たときも見に行った。

土浦スポーツセンターは小さな会場で、冬場はスケート場になる。どんなに観客を詰め込んでも700人がいいところだろう。切符がなくなっては困るからと、今回は前売り券を買った。

前売り券は、市内のスポーツ用品店に置いてあった。土浦には『円城寺』と『安藤』の2軒の店舗があったが、後者は土浦一高で甲子園に出た後、慶応大学に行き、プロ入り後は阪神タイガースで活躍した安藤統男さんの家族がやっていた店だった。

どちらの店で切符を買ったか記憶にないが、リングサイド席を1枚買った。値段は3000円くらいだったと思う。

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