日本の武器輸出戦略には致命的な弱点がある 国際見本市で中小企業を積極支援するべき

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防衛省・自衛隊は外国の実態を調査せず、自分たち組織政治を優先した装備開発を行うことが多い。ゆえに、先に挙げた長距離偵察システムのような実用に耐えないものが平気で開発されている。

やっと2年ぐらい前から、日本のデリゲーション(派遣団)がこの種の見本市に派遣されるようになり、今回のIDEXでも、初めて防衛省のデリゲーションが派遣された。防衛省の池松英浩航空機課長と航空機課員1名、若手の技術研究本部員2名が派遣され、さらに駐サウジ防衛駐在官、在UAE警備官、さらにジェトロ職員、在UAE大使館員らも合流していた。筆者は20年近くIDEXにデリゲーションを派遣すべきと主張してきた。それがやっと実現し、感慨深いものがあった。

ジャパンセル、FLEが出展

ジャパンセルのブース

今回IDEXではLEDサーチライトを開発したジャパンセル、訓練用模擬銃を販売するFLE(訓練用模擬銃の開発製造はキャロット社)の2社が出展し、大きな手応えを得ている。

FLEはIDEX2015の会場で、UAEに本拠地を置く投資開発企業体のインターナショナルゴールデングループとの間で、訓練用模擬銃を供給する契約の覚書を交わした。UAEの大手企業とこのような契約を結ぶのはこれが最初のケースとなる。

契約書にサインするFLEの浅利眞社長

政府は、このように世界の市場に挑戦している中小企業をサポートすべきだ。この種の見本市には一回出しただけでは成果は測れないため、中長期的にサポートをする必要がある。

ジェトロは航空ショーに共同パビリオンを出すことがあるが、民間に限定されており軍事向けの出展は受け付けていない。また一回ごとに成果を判断するので、その回の成果が振るわなかったと判断すれば、次回は出展をしないという。これはあまりに近視的であり、結果として予算の逐次投入で結果を出さないで終わることになるだろう。やるのであれば腰を据えて5年、10年計画で行うべきだ。

埼玉県の産業振興公社は昨年のファンボロー航空ショーに、地元中小企業を紹介するパビリオンを出展したが、一回ごとに成否を判断ぜず、出展事業は5年計画で行う。一回の見本市ごとの成果だけでは成否は判断できない、と公社の担当者は述べている。この姿勢こそが、公的機関が民間企業の見本市出展を支援する正しい姿勢だ。

世界的には防衛産業と航空宇宙産業を分けずに防衛航空宇宙産業と捉える事が多い。航空ショーへの出展にあたって軍事関連だけを除外するのは、諸外国の基準から見ると極めて異例な対応だ。

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