誤解がかなり多い「日本の生産性が低い」真の理由 企業の生産性=国の生産性とは必ずしもならない

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賃金には一般に下方硬直性があり、生産性が低下したときに同じ分だけ賃金(=基本給)を下げることが難しい。そのため、生産性が上がったとき、すぐにその分だけ賃金を上げることも現実的ではない。

実際、2021年度をみても、実質労働生産性上昇率は+1.1%(筆者試算・速報ベース)であったが、厚生労働省「毎月勤労統計」をみると実質賃金は+0.6%にとどまっている。

付加価値が増えないと、賃上げ交渉はシビアに

今年に入ってからの物価上昇により、賃上げの切実性がこれまで以上に高まっている。とはいえ、原資となる付加価値が増えない(=生産性が向上しない)状況で賃金を上げようとすれば企業利益を削ることになるため、賃金交渉もシビアになりやすい。

それよりは、利益と賃金の原資を増やす(=生産性を向上させる)ことを考えるほうが賃金を支払う側(企業)の抵抗感は低いだろう。

国の生活水準を上げることができるかを決める要因として、「生産性がすべてではない。だが、長期的に見ればほぼすべてである」と喝破したのは、ポール・クルーグマンであった。今こそ、この言葉を再びかみしめる時期になりつつあるのではないだろうか。

木内 康裕 日本生産性本部 生産性総合研究センター 上席研究員

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きうち やすひろ / Yasuhiro Kiuchi

1973年茨城県生まれ。立教大学大学院経済学研究科修了。政府系金融機関勤務を経て、2001 年 日本生産性本部に入職。2003年から生産性研究センターで生産性分析、及び各種調査研究に従事。専門は生産性に関する統計及び経済分析。国際的にみた日本の労働生産性の実態など主要国との比較にも詳しい。

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