下の図は、一定の働きにより、どれだけモノやサービスを提供したか(=物的労働生産性)と、どれだけ付加価値を生み出したか(=付加価値労働生産性)の関係を図式化したものである。
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懸命に働いたときの成果として意識されることが多いのは、一番左の物的労働生産性(生産/労働)である。例えば、メーカーでどれだけ多くの製品を所定の労働時間で生産したかなどを表したものだ。しかし、物的労働生産性を改善しても、適切な値付けを行い、利幅を確保できなければ、付加価値労働生産性(赤線で囲まれた部分)や賃金は改善しない。
現在、ウクライナ紛争や円安の影響もあり、エネルギーをはじめとする原材料価格が高騰している。そうした状況のもとで、より効率的に働く(=物的労働生産性を向上させる)だけでは、企業利益や付加価値の拡大につながるわけではない。そのため、付加価値ベースでみた(国レベルの)労働生産性も向上しない。
「付加価値労働生産性」向上には「価格政策」が不可欠
企業利益や付加価値労働生産性(付加価値/労働)を改善させるには、一定レベルの粗利を確保できる価格政策が不可欠であり、それが最近の値上げラッシュの理由になっている。
(もっとも、値上げがそのまま労働生産性の上昇につながるかというと、経済学的には必ずしもそうではない。物価変動の影響を除いて考える必要があるためだ。このあたりは若干ややこしいので第2回であらためて論じたい)
岸田政権が力を入れている賃上げを考えるうえでも、生産性向上の成否は無縁ではない。物価が上昇する中で生活水準を維持するには、賃金も同様に上昇させて実質賃金が低下しないようにする必要があるからだ。
しかし、賃上げを持続的に行うには、分配できる原資を増やさなければ、企業の支払い余力がいずれ枯渇してしまう。そうならないためには、付加価値労働生産性を向上させるしかない(ということを上図の右側は示している)。
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