誤解を招きやすいのは、ここに挙げたような企業レベルの生産性向上が進んでも、国レベルの労働生産性向上には必ずしもつながらない部分があるということだ。「日本の生産性の低さ」はいわば「国レベル」のもので、「付加価値」をベースに測定したものだ。
国レベルで見ると、当然ながらさまざまな分野で経済活動が行われているため、企業のように、働いている人数や時間当たりの生産数量や販売量、契約件数といった尺度で生産性を測ることができない。そのため付加価値で測ることになる。いわば、経済学的な尺度で測定をしたものであり、その違いが生産性のわかりにくさにもつながっている。
付加価値は「粗利」に近い概念
ちなみに、ここでいう付加価値も、わかるようでよくわからないといわれる用語の1つだ。
一般的な経済活動は、原材料や商品を仕入れ、何らかの加工をして価値をつけ、販売するプロセスをたどる。付加価値とは、何らかの加工をして価値を付けた分を指す。粗利に近い概念であり、国レベルでみるとGDPに相当する。付加価値をベースとした労働生産性は、OECDやILOなどでも分析が行われ、国際的にも幅広く用いられている。
簡単にいえば、より少ない労力でどれだけの粗利(≒付加価値)を稼ぎ出したかを測る経済指標ということになる。
ここでいう付加価値ベースの労働生産性は、物的な労働生産性とは似ているようで少し違う。日本の労働生産性が国際的にみて低いかどうかといったときも、基本的に付加価値ベースで比較されるため、どれだけ効率的に働いたかどうかだけが要因になるわけではない。
むしろ、まじめに休まず効率的に働いているかどうかだけでみれば、日本は主要国の中でもかなり上位になるのではと思う人も多いのではないだろうか(外国の研究者からも似たような意見を聞くので、ある意味で国際的な共通認識といってよいかもしれない)。
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