「あと半年水が引かない」大洪水パキスタンの今 凶暴化するモンスーン、凶暴化する被害の現実

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パキスタン、洪水
6月以降記録的な洪水に見舞われたパキスタンでは約300の村が完全に水没したほか、約3300万人が家を失うなど被災した。パキスタン当局によると、水が完全に引くまで3カ月〜6カ月かかるとみられる(写真:Kiana Hayeri/The New York Times)

パキスタン南部で小さな泥レンガの家に住むムハンマド・ジャーファール(40)にとって、自宅からの眺めはそれまで安らぎを与えてくれるものだった。ドアのすぐ先には緑の綿花畑が広がり、白い綿花はその1年を生きていくだけの収入を約束してくれていた。

だが今ではジャーファールの綿花畑は、パキスタンの国土の多くがそうであるように悪臭を放つ緑色の水に沈んでいる。パキスタンは6月以降、記録的な洪水に繰り返し見舞われ、ジャーファールの土地も数週間前の洪水で完全に水没した。飲み水の源となっていた井戸も、今では水の底だ。

「孤島で暮らしているようだ」。ジャーファールは、取材で現地を訪れたニューヨーク・タイムズの記者にそう語った。

氷河の融解も原因

パキスタンの肥沃な農業地帯に広がる何百という村に押し寄せる破滅的な洪水。南部のシンド州では、それまで農地に覆われていた地域が大きな2つの湖に変貌し、村は孤立して危険な状態となっている。パキスタン当局によると、この洪水は近年で最大の被害をもたらしており、水が引くまでには3〜6カ月かかる可能性があるという。

死者数は現時点で約1500人に達しており、その半分近くが子どもだ。被災者は3300万人を超える。モンスーンの雨量が例年を大幅に上回ったことに加え、氷河が融解したことも一連の洪水の原因となっている。

科学者は、温室効果ガスが引き起こした地球温暖化により、南アジアでは極端な豪雨の危険性が著しく高まっているという。南アジアは人類の4分の1が暮らす地域だ。科学者によると、今年のモンスーンの雨量を一段と破壊的なものにしているのが温暖化であることは、ほぼ間違いない。

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