日米の1人当たり富の格差、個人はどうすべきか 円安加速の中、「一億総二流」化に歯止めを

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日本は低成長で魅力がないからそこまで外資は食指を動かさないのではないか、という自虐的な声も聞かれる。ところが、例えば日本の住宅価格の上昇率は実質ベースで8.1%(2022年3月時点の前年同期比、Knight Frankの調査)と、今や主要先進国でトップクラスである。欧米の金利やインフレ率次第では、日本の優位性はさらに高まるだろう。

これまで日本の住宅価格は、借地借家法によって家賃が上昇しにくかったことが投資家にとっての重石になっていた。しかし、近年ではアメリカ等でも週によって家賃引き上げ幅にキャップがかけられるようになり、制度の違いは若干縮小した。新興国の一部でも住宅価格の上昇が見られるが、政治的な安定性や借入金利の安さを考えると日本が優位にある。

海外マネーが跋扈すれば日本人は住宅難に

そうした背景から海外マネーが安い日本の資産を買い進んだ場合の懸念の1つは、住宅価格が高騰し日本人が住宅を取得できなくなることである。特に、日本の30歳以下の持ち家比率は3割未満で、70%超の50歳以上に比べて問題は深刻だ。こうした住宅難の問題は、近年海外マネーの住宅投資が進んだ豪州やカナダなど、数多くの国々でみられた。さらに、同様に株式にもマネーが流れ込むならば、株式を持たない日本の家計資産の見劣りが目立つだろう。

1980年代、日本人は “一億総中流時代”などといわれ、皆が自分は相応に良い暮らしをしていると考えていた。しかし、現在グローバルに富を比較すると日本は“一億総二流時代”に突入しつつあるかもしれない。円安のリスクを意識し、改めて資産構成(ポートフォリオ)を考える必要があるだろう。

大槻 奈那 ピクテ・ジャパン シニア・フェロー

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おおつき なな / Nana Otsuki

東京大学文学部卒業。邦銀勤務の後、ロンドン・ビジネス・スクールにて経営学修士(MBA)を取得。格付け会社スタンダード&プアーズ、UBS証券、メリルリンチ日本証券にてアナリスト業務に従事。2016年1月よりマネックス証券 執行役員。2022年9月より現職。名古屋商科大学大学院教授、二松学舎大学客員教授を兼務。共著で、『S&P 日本の金融業界』シリーズ(東洋経済新報社)、『リテール金融のイノベーション』(金融財政事情研究会)、『本当にわかる債券と金利』(日本実業出版社)など。ロンドン証券取引所 アドバイザリーグループ・メンバー。政府委員を歴任。

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