あるシングルマザーのケースだ。昨年の年収は全国のサラリーマン平均の2倍弱と高かったが、新型コロナによる経済活動の萎縮で残業代が激減。しかも、今年たまたま子どもが扶養家族から外れて税率が上がったことも痛手となった。昨年の年収をベースに計算される住民税の支払も重なった6月、住宅ローンの支払いに行き詰ったという。
全国の住宅ローン相談を受ける最大手「任意売却119番」では、こうした相談が4月以降激増している。5月の住宅ローンの相談件数は670件と前年同月比1.8倍に跳ね上がり、6月にその勢いは加速したという。増加のほとんどは、新型コロナの影響によるものだ。しかし、この会社に寄せられる相談は、売却しなければ返済できないといういわば最終段階に至ったものだけ。ローンに悩む世帯全体からみれば氷山の一角だ。
住宅ローン返済で悩む人は推定4~5万人
金融庁によれば全国銀行への住宅ローンの返済条件変更の申込数は、6月末で1万3395件に上った。5月以降の増加分(地銀等で2割強)を考慮し、かつ、借主の家族(1世帯2.5人)も返済や家計の切り盛りに悩んでいると仮定すると、4~5万人が直接・間接的に住宅ローン返済に悩まされていると推定される。
年間の自己破産者が7万人しかいない国で、ローン返済に悩む人がこれだけ増えているとすればやはり深刻に捉えざるをえない。
ちなみに、アメリカの状況ははるかに厳しい。住宅ローン残高は日本の約5倍の9.3兆ドル(=990兆円)で、債務者数は8100万人に上る(2020年3月末)。このうち、延滞率は5月末時点で8%にものぼる。さらに、世界経済を分析する調査会社オックスフォード・エコノミクスによれば、今後は延滞率が15%・200万世帯まで増加し、リーマン後の最悪期の12.4%を超える可能性が高いと予想している。調査会社OnePollによれば、アメリカの半数以上の世帯がローンの支払いを続けられるかどうかを心配しているという。日本とはまさに桁違いだ。
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