コロナで凍結、マンション価格は下がるのか 企業収益・雇用悪化なら売れ行き鈍化も
「日を追うごとに問い合わせが減っている」。
緊急事態宣言発令後の4月中旬、神奈川県内の不動産仲介会社は不安を吐露した。3月以降、マンション市場は文字どおり「凍結」状態に陥った。新築マンションのモデルルームはまさに「三密」の空間で、大手デベロッパーを中心に営業を自粛。中古マンションでも仲介店舗の閉鎖や内覧のキャンセルが相次ぎ、新築・中古マンションとも取引が大幅に縮小した(下図)。
完全回復には時間
緊急事態宣言が全面的に解除された5月下旬以降、販売現場は順次再開した。モデルルームの客足は「コロナ前の8~9割の水準に戻った」(中堅デベロッパー)が、完全回復にはまだ時間を要する。
『週刊東洋経済』は6月30日発売号で、「激震!不動産」を特集。外出自粛やリモートワークなど、逆風に揺れる不動産業界の針路に迫った。
リーマンショックで体力の乏しい新興不動産会社は淘汰されているため、コロナ禍後にマンションが投げ売りされる見込みは薄い。それでも、「企業倒産や廃業によって工場や事務所の跡地が安値で売り出され、それを取得できたマンション会社は、販売中の物件を値下げする余力が生まれる」(マンション調査会社のトータルブレインの杉原禎之副社長)。ホテル開発業者がホテル用地を相場より1割程度安い価格でマンションデベロッパーに持ち込む動きもある。
売り主の多くが個人である中古マンションについてはどうか。東京の湾岸地域で不動産仲介を行うケイズワンの藤田祥吾氏は、「この数年は相場より5~10%ほど高めに売り出した物件でも成約していた。コロナの収束が長引けばその分が下がるのでは」と推測する。
中古マンションは売り出しから成約まで3カ月が目安。現在売り出し中の物件がいくらで成約するか、秋口になれば見えてくる。
居住用マンションは結婚や出産、転勤などライフイベントが購入の動機となることが多い。業界には「家を持ちたいという需要は消えていない。外出自粛で購入時期が先送りになっただけ」(大手デベロッパー)という楽観論が漂う。
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