7月に金融広報中央委員会(事務局:日本銀行)から3年に1度の「金融リテラシー調査」が発表された。かの2000万円年金不足問題の陰に隠れてあまり目立たなかったが、世界にも稀な2万5000人規模のアンケートには熱がこもっている。
ところがこの調査結果の中に、やや違和感のあるデータがある。日本人は高齢になるにつれ、金融知識・判断力は高まっているというのだ。実はこの数字にはからくりがある。
本調査の対象は、民間のネットリサーチ会社の登録者のうち、50以上の金融系の質問に答えることに応諾した人々だ。質問は、例えば、「金利が上がったら、通常、債券価格はどうなるか?」などと、なかなかタフだ。高齢の回答者は、相当金融知識に覚えのある層に限定されている可能性がある。
また、一部の地域では、70歳代の女性のモニターが少なかったので60歳代で代替したとされている。さらに、この調査は70歳代までが対象となっており、総人口比で9%程度存在する80歳代の人々はここには含まれていない。しかし、今後10年のうちに日本の金融市場を揺るがす大きな火種となりそうなのが、まさに、この大規模調査で漏れてしまった後期高齢者層なのである。
多すぎる口座数の管理が高齢者には負担
高齢者の金融リテラシー問題の1つ目は、資産管理の問題だ。日本は他国に比べて1人当たりの預金口座数が多い。欧州諸国は2口座強程度であるのに対し、日本では1人当たり3口座となっている(国際比較が可能な決済用銀行口座の平均)。定期のみの口座などを含めるとさらに多いともいわれる。
成人の7%が口座を持たないという米国とは異なり、日本人の多くは社会人になるとまず給与振り込み用の銀行口座を開設する。次に、住宅ローンを借りると返済用口座を作らされ、定年後は年金の受け取り用の口座も必要になる。さらに特殊事情として、2002年のペイオフ(金融機関が破綻した場合の保険金支払い)解禁の際に、1000万円の預金保険の対象範囲内に残高が収まるよう、銀行を分散させた人もいる。
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