日本の金融制度は「老いるショック」に無策だ 今の「金融ジェロントロジー」の議論ではダメ

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最後の問題は、金融機関の収益だ。金融資産が動かなくなれば、当然手数料収益の低下を招く。また、日本の持ち家面積のうち4割は世帯主が65歳以上の家庭が保有するが、これらに対する住宅ローンの完済年齢は最高84歳となっている。満期前に認知レベルが低下している例は少なくなく、取り立ても競売も極めて難しくなるだろう。

最近ではこれらに加えて、 投資用アパート・マンション融資の分野でも高齢化が課題となりつつある。例えば、りそな銀行が今年度初めて開示したアパマン融資の年齢別内訳によれば、60歳以上に対する融資が全体の80%を占め、そのうち7割、全体の55%が70歳以上となっている 。お金を借りた時点では合理的な判断ができたとしても、平均20年とされる借入期間のうちには後期高齢者となっていく。

投資物件に空室が出た場合に賃料を下げるなどといった対応が適格にできるのか。また、認知症になってしまった場合には担保権行使が難しくなるが、その場合にもスムーズに債務の整理ができるのか、大いに疑問である。

生前贈与や成年後見制度、家族信託にも問題点

認知症になってしまうと対策は難しい(イラスト:マツ / PIXTA)

こうした問題に対してとれる現状の策としては、認知に問題が発生する前に生前贈与するか、成年後見制度や家族信託といった本人以外に管理を託す仕組みがある。

しかしそれぞれに課題が多い。

まず、生前贈与は最大50%と税率が高く、かつ、一度贈与すると戻すことはできない。本人としては、自分の将来の備えが少なくなるのは不安である。

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