物価高騰が企業業績に与える影響は、企業規模によって大きく異なる。規模の大きな企業の利益が増大する半面で、零細企業の利益は減少している。
昨今の経済現象を鮮やかに斬り、矛盾を指摘し、人々が信じて疑わない「通説」を粉砕する──。野口悠紀雄氏による連載第77回。
天国と地獄
昨年秋以降、資源価格が高騰し、それに円安が加わって、輸入物価が高騰している。
これは企業の原価を上昇させる。ところが、企業はこのすべてを売上高に転嫁することができないため、窮地に陥っていると報道されている。小さな飲食店などで、これが深刻な問題になっていると言われる。
ところが他方で、上場企業の業績は好調だ。とくに資源関係の企業の純利益は史上最高だと報道されている。
法人企業統計調査のデータ(金融機関を除く)を分析すると、以下に示すように、物価高騰の影響は、企業規模によって天国と地獄の差があることがわかる。
企業全体の業績は好転
図表1は、企業の売上原価などについて、2022年4~6月期の計数を2021年同期と比較したものだ。
全企業について見ると、売上高の増加率(7.2%)は、売上原価の増加率(7.7%)を下回った。それにもかかわらず、粗利益(売上高―売上原価)は、5.7%増加した。
これは、図表2に見るように、売上高の増加額(22.6兆円)が原価の増加額(18.1兆円)を上回ったからだ。
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