資本金が1000万円以上~5000万円未満の企業の従業員数は1249万人であり、法人企業統計調査がカバーする企業の総従業員数3246万人の38.5%を占める。このように、全体の中で無視できない比重を占めている企業の状況が、このようなものなのだ。
日本には、これより規模の小さい企業もある。また個人企業は法人企業統計では把握していない。こうした企業は、いま見た資本金1000万円以上~5000万円未満の企業と同じ状況、あるいは、それより悪い状況に陥っていると考えられる。
以上で見た規模以外の企業についての状況は、つぎのとおりだ。
どの資本金階層においても、売上高の増加額は原価の増加額より大きい。その結果、付加価値が増大している。つまり原価の上昇は、売上高に転嫁されている。
この傾向がとくに著しいのは、資本金1億円以上~10億円未満と5000万円以上~1億円未満の企業だ。ここでは、売上高の増加率が原価の増加率を上回っている。その結果、粗利益、営業利益、経常利益の増加率が2桁になっている。5000万円以上~1億円未満では、営業利益が50%を超える高い伸び率を示している。
企業規模によって影響が違う理由
このように、最近の物価上昇による影響は、資本金階層によって大きく違う。
なぜ企業規模によって大きな違いが生じるのだろうか?
それは、企業間の取引は、経済理論で想定しているような完全競争市場(多数の参加者による競争的な市場)において行われるのではなく、少数の関係者によって行われ、価格が決められるからだ。
その場合、特殊な技術などで差別化できる能力を持っているのでなければ、大企業が強い立場にあり、零細小企業はそれに従わざるをえない。
零細小企業は、価格面で譲歩しても、取引を獲得できることのほうが重要と考えるだろう。下請け企業の場合には、とくにこうしたことになる。
もちろん、こうした関係は、平常時においても存在するものだ。ただ、経済環境が変化しなければ、やむをえないものと考えられることが多い。しかし、今回のように価格が急激に変わる場合には、大きな問題を引き起こす。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら