日銀がこの円安を止めないのは大企業が潤うから 中小零細や庶民はあえぎ賃金も上がらないのに

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価格転嫁がどの程度なされたかは、売上高や原価の「増加率」ではなく、「増加額」で判断したほうがいいだろう。

売上高の増加額が原価の増加額より大きければ、粗利益は増加する。そして、賃金や利益を増やすことが可能になる。その意味で、企業は、売上原価の上昇を売上高に転嫁したと言える(なお、売上高や原価の変化が、数量の変化によるのか、あるいは価格の変化によるのかについては、後述する)。

図表1、2の「全規模」の数字を見る限り、企業の業績は好転している。

物価上昇に伴う原価の上昇を売上高に転嫁できずに苦しんでいる企業が多いと言われるのだが、そうした状況は、この数字からは見られない。

従業員給与・賞与の伸びは2.6%にとどまったので、営業利益や経常利益が13.1%、17.6%という非常に高い伸びになった。

これで見る限り、資源価格高騰や円安は、企業にとって望ましい影響を与えている。

他方で、賃金はあまり伸びず、消費者物価は上昇している。

したがって、以上で見た限りでは、円安・物価高騰によって、企業の状況は好転しているが、消費者の状況は悪化しているということになる。

地獄に突き落とされた零細企業

ところが、状況を企業規模別に見ると、以上で見たのとは著しい違いが見られるのである。

とくに悲惨なのが、資本金が5000万円未満の企業だ。

資本金2000万円以上~5000万円未満では、売上高増加額と原価増加額がほぼ同程度だ。その結果、営業利益や経常利益が減少している。また、従業員数も減少している。

資本金1000万円以上~2000万円未満では、売上高も原価も、そして粗利益も営業利益も減少している。従業員数の減少率は4.6%という高い値だ。

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