今のインフレを見誤る人が知らない「4つの要因」 「原油価格の上昇」だけでは到底、説明できない

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

両国と取引している日本企業も大きな影響を受けます。たとえば、中国で製造した部品を輸入し、国内で組み立てを行って半完成品をアメリカに輸出しているケースでは、アメリカの判断次第で輸出ができなくなります。逆も成立し、特定のアメリカ製部品を搭載している日本製品を中国に輸出できないケースも出てくるでしょう。

各社が一連の地政学的リスクを回避するには、米中どちらかの市場を捨てるか、サプライチェーンを中国向けとアメリカ向けに分け、二重投資するしかありません。前者は価格が引き上げられ、後者は減価償却が増えてコスト増加要因となります。実際、部品メーカーの村田製作所は、米中対立の激化によってサプライチェーンに対する投資が二重になり、製品コストが上昇するリスクがあると説明しています。

ロシアによるウクライナに侵攻によって、こうした国家間の対立がさらに激しくなると予想されています。世界経済は今後、アメリカ、欧州、中国(ロシアを含む)という3つのブロックに分断され、各国がエゴをむき出しに資源を奪い合う可能性が高くなるでしょう。こうした動きは、確実に物価上昇をもたらします。

世界的な金余りが物価を押し上げる

今回のインフレのダメ押しとなっているのが、④の量的緩和策による全世界的な金余りです。市場に貨幣を大量供給すると、物価には上昇圧力が加わります。各国はリーマン・ショックに対応するため、中央銀行が積極的に国債を購入し、市場にマネーを大量供給する量的緩和策を実施してきました。量的緩和策は、意図的に物価上昇を引き起こして実質金利を下げる政策ですから、当然のことながら、強烈な物価上昇要因となります。

これまで、日本を除く各国は、量的緩和策によってそれなりの景気回復を実現してきました。そのため、物価上昇は大きな問題にはなっていませんでした。確かに物価は上がりましたが、その分だけ経済も成長し、賃金も上がっていたので、消費者は何とか生活を維持することができたのです。

次ページマネーの回収全世界的に進んでいない
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事