「家族に感謝されたい」と語る中年男の残念な思考 仕事に打ち込めるのは誰のおかげか考える必要

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先ほど申し上げたとおり、長年の勤務によってMTさんご自身もつらいことなど多々あったかと思います。

でも、同様にご家族の方たちもそういった、つらいことや悲しいこと、我慢してきたことや逃げ出したかったことなど、沢山あるハズです。

場合によっては、むしろ日常生活というリアルな場面につねにいることが求められるご家族のほうが、「仕事という逃げ場」のあったMTさんよりも大変であった可能性もあります。

そういった、自分を支えてくれている存在に気がつき、感謝できるか否か、つまりそういった方に対して「今までありがとう」という感謝の気持ちを伝えられるか否かは、自分中心マインドからの脱却の第一歩です。

感謝されたい、ではなく、感謝する。

そうすることで、決して自分1人で生きてきたわけでもなく、自分が家族を支えてきたわけでもなかったことに気がつくはずです。

長年勤め上げてこられたのは、自分1人の頑張りでもなく、ましてや自分1人が偉いわけではない。支えてくれる存在がいたからこそ、ほかのすべてをやってくれていた方がいたから、自分がなんとかやってこられたのであり、自分1人が家族を支えてきたのではない、と気がつく必要があります。

そうではなく、家族でお互いを支えあって生きてきたのだ。そのことに気がつき、そのことに感謝し、そのことに幸せを感じる。そういった方向にご自身のマインドを軌道修正してみてはいかがでしょうか。

少なくとも、そのほうにマインドをシフトすることで、定年後の人間関係を少しは円滑にすることができるはずです。

「俺がやった、俺が偉い」ではなく、「家族で成し遂げた。本当にありがとう」です。そして勤務先にも、「場所と機会を提供してくれてありがとう」、です。

自分1人が人生の主人公ではない

自分1人が人生の主人公だと考えているようではいけません。家族という単位、社会という単位で、支えあいながら生きて、生活しているのが人間です。会社という組織そのものも、決して1人では成し遂げられない大きな仕事を皆で集まって、皆で協力して成し遂げる場です。

自分1人が主人公ではなく、ヒトの数だけ主人公がいるのです。そしてそのことに気がつけるか否か、そのことに感謝できるか。それがこれからの円滑な人間関係の構築に大切です。

そのような考え方で、定年後MTさんが新たな、そしてよりよい人生の幕開けを迎えるであろうことを応援しております。

安井 元康 『非学歴エリート』著者

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やすい もとやす / Motoyasu Yasui

MCJ社長兼最高執行責任者(COO)。アニメーションの企画・制作を手掛けるベンチャー企業を経て、MCJにて東証への上場を経験。その後、経営共創基盤にて戦略コンサルタントして9年間活躍し、2016年3月にMCJに復帰。著書に学歴コンプレックスに悩みながらも独自の方法でキャリアを切り開いてきた様子を描いた『非学歴エリート』(飛鳥新社)や、自分ならではの人生を生きる術を描いた『極端のすすめ』(草思社)等がある。

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