アパルトヘイト撤廃20年、激変の南アフリカ 南アフリカ全権大使に聞く

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交渉などの決定も、きちんと調べて納得してからの契約なので、最初は時間がかかります、しかし、一度決定したらそこからはリスクをとり、イノベーションが得意なので動きは早いです。南アフリカの企業とパートナーを組むなら時間の使い方と決定後のスピードには慣れないといけません。

――パートナーと言えばビジネスのシステムのBEE(Black Economic Empowerment)とはどんな政策ですか?

ペコ大使:BEEは政府の政策で、黒人が技術を習得し、企業のオーナーシップを持つことを後押ししているものです。20年前は黒人は投資することも、大きなビジネスをスタートすることもできず、小さな小売りのお店などしか行うことができませんでした。アパルトヘイトの時には黒人はビジネスを拡げる知識や国際的な経験を持つこともできなかったのです

BEEは進出する企業に黒人とのパートナーシップを結ばせ、技術でも資本でも何かしらの権利を25%以上持たせることを推奨する政策です。この目的は黒人の雇用を守るためではなく、黒人に知識と技術を持たせることです。

今、BEEによって大会社が黒人の中小企業にそのスキルと経験を積ませることができます。パートナー企業にとっても税の免状など様々な利点があり、これは相互にとってメリットのある政策です。

――BEEは黒人の企業に国を発展させる技術を持たせることなのですね。

ペコ大使:そうです。25%はそんなに大きな数字ではありません。それにより南アフリカの黒人の水準をあげることができます。

――南アフリカには11の民族がいますが、何か違いはありますか?

ペコ大使:南アフリカはRainbow Nation(虹の国)と呼ばれています。私は南アフリカの美しさはそれぞれの言語を話してもお互いを理解し、共存していることだと思います。その民族と言語が私たちを1つに繋げていると信じており、これからもこの形態を保ってほしいと思っています。

ゾロの言葉が一番多く話されていますが、その言葉が勝っているわけではなく、会話の中に色々な民族の言語が混ざる事もありますし、それでもみんなが理解しています。英語はビジネスの言語です。民族の言葉が国をつくり、伝統、私たちのアイデンティティを作っています。

――これから日本に期待することは何でしょうか?

ペコ大使:南アフリカには沢山の宝物があります。プラチナ、金、マンガンなどの天然資源に恵まれています。それに”Blue Economy”と呼ばれる海の資源もあります。

医療に活かせる資源、スキンローションの開発、自然食品、健康食品などの開発など可能性は山ほどありますが、まだそれらの資源が最大限にはいかされていません。栄養はアフリカ全土にとって重要な課題ですのでこれから伸びるマーケットです。

また南アフリカの「空」も宝物です。すみきった青い空は人工衛星を発達させました。人工衛星でコミュニケーションのネットワークを作って、地方と都市で情報を共有しています。電波望遠鏡では空から下を見て気候を読み、どこに投資し、どこを開拓するべきか探査しています。日本に期待することはそれらの資源を活用することです。

(撮影:今井康一)
 

竹村 真紀子 IWCJ代表

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たけむら まきこ / Makiko Takemura

一般財団法人International Women's Club JAPAN(IWCJ)代表理事
International Women's Club ASIA(IWCA)事務局長。日韓中を中心にグローバルマインドをもつ家族で構成される俱楽部を運営し、アジア圏でのビジネスマッチングを推進するとともに、次世代がアジア人としてグローバルに活躍できるよう、30カ国以上の駐日大使館の協力を得て、子ども向けにリトルアンバサダー・プログラムを開催。国際機関で海外人向けの「日本のビジネスマナー」研修を担当。
 

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