欧米諸国によるロシア、イラン、キューバに対する経済制裁が話題になっている。21世紀の国際政治に制裁が果たす役割は高まりつつあり、過去の成果を考察する価値はありそうだ。
ゲリー・ハフバウアー氏とジェフリー・ショット氏の著書にあるように、経済制裁の歴史は少なくとも紀元前432年にさかのぼる。この年、ギリシャの軍人政治家ペリクレスが、3人の女が拉致されたのを受けて「メガラ法令」を発した。現代では、米国がさまざまな目的のために経済制裁を活用してきた。
経済制裁の限界
冷戦時代にも、米国は中南米の非友好国の政府を不安定化させる目的で制裁に踏み切った。ただし制裁は、最終的に政権が崩壊した国でさえ、マイナーな役割しか果たさなかったようだ。1990年代初めのセルビアに対する経済制裁は、ボスニア侵攻を抑止できなかった。
旧ソビエト連邦も中国、アルバニア、ユーゴスラビアに制裁を実施したが、効き目がなかった。例外はフィンランドへの1958年の制裁で、政策を変更させた。
キューバに対する米国の厳しい経済制裁は、カストロ政権を屈服させるに至らなかった。むしろ外交関係を再構築しようともくろむオバマ大統領の政策のほうが、大きな効果を発揮しそうだ。
しかし制裁が奏功する場合もある。1980年代には、国際合意に基づき南アフリカに対して経済制裁が実施され、アパルトヘイトを廃止に追い込むのに役立った。同様に、制裁が効いたおかげもあって、イランが交渉のテーブルに着いた。
現在、ロシア経済は大きな困難に直面している。ただしこれは、制裁の効果というより、実際にダメージを与えたのは国際原油価格の大暴落だ。暴落がロシアの歳入に大きな打撃を与えており、米国とサウジアラビアがロシアを屈服させようとたくらんでいるとの見方もある。
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