巨大銀行の不正取引がなくならないワケ 43億ドルの罰金でも幹部が責任を取らない

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シティグループやJPモルガンなどが罰金を課された(撮影:尾形 文繁)

2014年11月、為替市場を不正操作した疑惑をめぐり、英国主要6銀行に計43億ドルの罰金を科す和解案を英金融行為規制機構(FCA)が発表した。

1年にわたる調査で明らかになった悪質な慣行や管理不備はショッキングだった。強欲なトレーダーたちの間で交わされた稚拙なメールやチャットのやり取りからは、利潤と私益のために午後の為替相場を不正に操作する大胆な共謀が浮き彫りとなった。シニアマネジャーらによるずさんな管理が、高給取りの従業員による下品で子供じみた振る舞いを許した。「三鋭士」や「Aチーム」などのあだ名で彼らが取った傍若無人な行動は、各組織に甚大な被害をもたらした。

ただ、今回の一件で辞任を強いられた幹部はいない。理由は、過去5年間に主要各行が負担した罰金や訴訟費用に比べれば、43億ドルなど小銭にすぎないことだ。モルガン・スタンレーなどの試算では、米国や欧州のトップ22行が2009年以降に支払いを強いられた額は2300億ドルにも上る。今回の和解額の50倍以上だ。しかもこの数字には、不良債権や行き過ぎた金融工学が各行にもたらした巨額の損失は含まれていない。

罰金の半分以上は米国の銀行が負担

さらに、罰金の半分以上は米国の銀行が負担させられた。欧州の各行が支払ったのは1000億ドル強程度で、うち約半分は英国トップ7行が支払っている。

数字が語るのは全貌の一部でしかない。米国における罰金はファニー・メイ、フレディ・マックの2つの政府援助法人に販売された不動産担保証券に対するものが大半を占めていた。各行はその点に関する規制当局の主張を全面的には受け入れていないようだが、おとなしく罰金を支払っている。

一方、英国に目を向けると、最も大きな罰金は支払保障保険(PPI)を契約させられた住宅ローン借り主に対する補償金だった。規制当局は、この保険の大部分が借り主にとっては何の利益もなく、不適切に契約させられたと主張する。銀行側はといえば、補償金支払先の請求者の中には補償に値しない者もいると考えているが、最終的にはおとなしく支払いをしている。英国の各行はこれまでに370億ドルの損害を被っており、今後さらに50億ドル前後かかるとみられる。

モルガン・スタンレーの分析では、すでに判明している間違いや漏れに関連して今後2年の間にさらに700億ドルの罰金や訴訟費用が発生する旨が示唆されている。そのほかにも新たな流れが顕在化する可能性もある。

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