経済制裁が効かない理由はどこにあるのか

粘る北朝鮮、「効く」「効かない」の境界線は?

これは、米国の戦略家を買いかぶった見方だ。原油価格の大暴落を引き起こしたのは、米国のシェールエネルギー革命と、中国経済の急激な減速が重なったことだろう。中国減速で広範囲にわたりコモディティ価格が下落し、米国政府と対立関係にないと思われるアルゼンチンやブラジルなどの国々にも、壊滅的な影響を及ぼしている。

経済制裁が効果を発揮しなかった理由の1つは、一部の国が制裁に応じなかったことだ。実際には、制裁を科す側の国の国内で意見が大きく割れている場合も、制裁の足を引っ張ることが多い。

さらに言えば、制裁を科す側の国も、自らの弱点に手を打つ用意ができていなくてはならない。北朝鮮は厳しい経済制裁を受けているにもかかわらず、権力に固執し続けている。これは中国が、朝鮮半島に統一国家が生まれた場合に国境を接するのを恐れ、北朝鮮への支援の撤退に踏み切れないからだろう。

風刺映画は北朝鮮にとって耐えがたい侮辱

ただし、北朝鮮が米ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメント(SPE)のコンピュータを攻撃したとされる件は、非難されて当然だが、経済的報復をしただけ、との見方も成り立つ。SPEは北朝鮮の指導者である金正恩「若将軍様」をこけにした風刺映画を制作した。これは耐えがたい侮辱であり、北朝鮮のエリートは、軍事的な行動に出る代わりに、経済的な破壊行為で応酬した。

ロシアもまた、これまで外交政策の目標達成のためにサイバー攻撃を展開してきた。現実に、ロシアは北朝鮮よりもずっと手ごわいハッカーを抱えている。

核の拡散によって通常兵器によるグローバル規模の戦争が考えにくくなっている世界において、21世紀の地政学では、経済制裁や破壊行為が大きな役割を果たす可能性がある。古代ギリシャではペリクレスが制裁を発動したが、紛争の防止には役立たず、ついにペロポネソス戦争が勃発するきっかけとなった。21世紀においては、人々が英知を結集し、経済制裁から暴力ではなく交渉を引き出すよう、願わずにはいられない。

週刊東洋経済2015年1月24日号

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