私たちの母の世代は台所に集まりながら、友人たちとどのように社会を変えられるかを話し合っていました。それが台所から出て教会で話し合うようになり、グループを作って議論するようになりました。
社会に変化を起こすためには女性が組織を創り、組織の中で議論し、行動を起こすことが大切です。1人でできることには限りがありますが、組織になれば大きなことができます。今、南アフリカでは女性の組織が多くありますが、その数と活動が政府の意識を変え、社会を変えて行っています。
家庭内での性的暴力はDVと見なされるように
――家庭での男女の役割分担などはどうですか?
ペコ大使:日本と似ています。伝統的に女性は家庭を守るべきという意識があり、実際のところはまだ残っています。しかし女性が家庭にいるべきというのは女性の決定の権利を奪っていると、やはり私の母の世代が立ち上がりました。うまく行ったことは、家庭の中の問題を公的な場所での議論に持ち込んだことです。
例えば、家庭内で強制的な性的暴力があったとしても、以前は夫婦間では成立しないとされていましたが、20年の活動の結果、家庭内でも両者の同意がない場合はDVと見なされ、法的に裁かれるようになりました。家庭の中のことをきちんと公での議論に持って行き、社会全体の問題であるという意識を作ったこと、それが成功の一因でした。
男性の権利のチャンピオンはネルソン・マンデラ氏ですが、女性の権利のチャンピオンは今の大統領です。ネルソン・マンデラ氏の人権政策を見習い、大統領が政府として女性の権利の必要性を押し進めました。その流れから次は各民族・地域のチーフ達が女性に対しての意識と態度を変えてきました。以前は男性しか継承できなかったチーフの地位を、女性にも権利が与えられるようにしたのです。
私の家族はみんな女性です。昔であれば甥が家を引き継ぐことになりますが、今では長女である私が引き継ぐことができ、それは憲法で守られていることです。
――民族の伝統と風習を引き継いでいるチーフの意識を変えるというのはどのようにしてできたのですか?
ペコ大使:それはもちろん簡単なことではありませんでした。高い地位(=政府)のリーダーシップからの落とし込みが効果をあげました。コミュニティ及び民族にとって女性に教育を与えること、女性に権利を与えることがどれほど有益かを意識づけたのです。実際に教育で言えば、女の子のほうが男の子より成績が良いことが多かったのです。その事実がコミュニティーや親の意識を変えていったのです。
女性の権利の向上などは政府のみのイニシアティブでも、草の根だけでも弱く、政府、組織、メディア、グループ、母親と様々な階層の人達全員が意識し続けることが大切です。
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