成都便再開でパンダ中国行きに現実味も残る課題 「高齢のタンタン」中国行き期限は2022年12月末
神戸市立王子動物園で暮らす雌のタンタン(旦旦)は、2020年7月15日までに四川省へ戻って余生を過ごす予定だったが、渡航は延期されている。延期の一因は、成都直行便の運休だ。飛行機を乗り継ぐと、高齢のタンタンの心身に負担が大きいとして、王子動物園は2020年当時、成都直行便での渡航を希望していた。
タンタンは2022年9月16日に27歳の誕生日を迎える。何歳以上のパンダを高齢と見なすかは、「16歳以上」「20歳以上」など専門家によって見解が異なり、10年以上前は最高でも「21歳以上」程度。現在は、もっと上とする意見もあるかもしれないが、それでもタンタンは十分高齢だろう。
そもそもタンタンが中国へ戻ることになったのは、高齢になり、余生を四川省で過ごしたほうがよいとの中国側の判断による。2020年当時、タンタンの行き先は、四川省にある「中国ジャイアントパンダ保護研究センター」(CCRCGP)の都江堰(とこうえん)基地だった。成都からは車で1時間ほど。高齢のパンダが暮らしやすいと評判の施設だ。
CCRCGPの獣医師の成彦曦(せいえんし)さんと飼育員の王平峰(おうへいほう)さんに都江堰基地の特徴を尋ねると、「高齢や疾病の個体の健康管理のため、MRI(磁気共鳴画像装置)など高度医療機器をはじめ充実した設備を備えており、経験豊富な飼育員が担当しています」とのこと。二人は、心臓疾患が判明したタンタンのために、8月初旬まで日本に滞在していた(参照:『「パンダの心臓疾患は珍しい」神戸の旦旦を襲う病』)。
44頭のパンダが暮らす都江堰基地
CCRCGPには4つの基地が四川省にある。CCRCGPによると、2022年8月中旬時点のパンダの数は、臥龍神樹坪(がりゅうしんじゅへい)基地が86頭、臥龍核桃坪(かくとうへい)基地が24頭、都江堰基地が44頭、雅安碧峰峡(があんへきほうきょう)基地が67頭。
ただし、パンダがいる場所は不定期に変わるので、各基地の数は変動する。臥龍神樹坪、都江堰、雅安碧峰峡の3基地は公開されていて、筆者もすべて訪れた。臥龍核桃坪基地は公開されていない。
成さんと王さんによると、CCRCGPの高齢パンダのほとんどが都江堰基地で飼育されている。ここでは、高齢パンダそれぞれに専門の飼育看護スタッフをつけている。投薬と給餌は、獣医師と栄養士の指示に従う。スタッフは、パンダの行動を詳しく記録して、毎週開かれる会議で状況をまとめ、対応を調整する。
もし高齢パンダが病気になったら、隔離して治療するのが原則だ。高齢パンダの飼育経験者を2人以上つけ、24時間看護して投薬やマッサージなどを行い、獣医師と協力して治療する。
なお、四川省には約200頭のパンダが暮らす「成都ジャイアントパンダ繁育研究基地」もあるが、こちらはCCRCGPの基地ではない。
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