成都便再開でパンダ中国行きに現実味も残る課題 「高齢のタンタン」中国行き期限は2022年12月末

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もし飛行機の運航と王子動物園の職員の出入国に支障がなくなった場合、タンタンの体は中国へ行ける状態なのだろうか。タンタンが中国へ行ける場合、行き先はCCRCGPの都江堰基地で変更ないのだろうか。

この2点の質問に対する王子動物園と成さん、王さんの8月中旬時点の回答は「日中双方が引き続き共同で病状の推移を注視しながら、協議・検討していきます」だった。2020年当時、王子動物園が明言していた「都江堰基地」という行き先が、曖昧な内容に変わった。

「タンタンの中国返還に関しては、これからの協議次第」(王子動物園)なので、どうなるかわからないが、タンタンの体が渡航に耐えられない可能性や、タンタンが22年以上暮らす王子動物園に、このままいたほうがいいとの判断に傾く可能性もゼロではないだろう。

成都は9月からロックダウン

アドベンチャーワールドで生まれた双子の桜浜(おうひん、2022年12月2日で8歳)・桃浜(とうひん、同)と妹の結浜(ゆいひん、2022年9月18日で6歳)、上野動物園で生まれたシャンシャン(香香、5歳)も、中国行きの理由はタンタンと異なるが、コロナ禍前なら中国へ行っていてもおかしくない年齢だ。

アドベンチャーワールドのパンダの最初の行き先は前述の成都ジャイアントパンダ繁育研究基地、シャンシャンの行き先はCCRCGPの基地が濃厚。いずれも、最寄りの空港は成都だ。

4頭とも雌で、彼女たちの中国行きの目的は繁殖。雌が繁殖できるようになる性成熟の年齢は4歳前後とされるので、お年頃だ。日本以外にも、中国行きの可能性があるパンダはいる(参照:『シャンシャン中国行き12月期限、結局いつ見納め?』)。オランダのアウエハンツ動物園は、2020年5月1日に生まれた2歳のファンシン(梵星)を年内に中国へ行かせたい意向を示している。

シャンシャンの中国行きの期限は当初、2020年12月末だった。シャンシャンは当時、上海で乗り継いで成都の空港へ行く可能性があったが、上野動物園も「シャンシャンのために、できれば成都直行便で」と希望していた。現在、シャンシャンの中国行きの期限は、タンタンと同じ2022年12月末だ。

一方、中国国内は感染の再拡大を受け、複数の都市で行動規制が取り入れられている。約2100万人もの人口を抱える成都では、9月1日夕方からロックダウン(都市封鎖)が始まった。10月16日からは、中国共産党が5年に1度の党大会を北京で開く。ゼロコロナ政策に関する今後の方針も示すとみられる。

日本にいるパンダたちが年内に中国へ行くかどうかは、今のところ不透明だ。もし中国へ行くとなれば、ガオガオのように、馴染んだ遊具なども一緒に運ぶかもしれない。中国へ行くにせよ日本で暮らすにせよ、できるだけパンダたちにとって最良の場所で暮らせることを願いたい。

中川 美帆 パンダジャーナリスト

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なかがわ みほ / Miho Nakagawa

福岡県生まれ、早稲田大学教育学部卒。毎日新聞出版「週刊エコノミスト」などの記者を経て、ジャイアントパンダに関わる各分野の専門家に取材している。訪れたパンダの飼育地は、日本(4カ所)、中国本土(11カ所)、香港、マカオ、台湾、韓国、インドネシア、シンガポール、マレーシア、タイ、カナダ(2カ所)、アメリカ(4カ所)、メキシコ、ベルギー、スペイン、オーストリア、ドイツ、フランス、オランダ、イギリス、フィンランド、デンマーク、ロシア。近著『パンダワールド We love PANDA』(大和書房)

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