成都便再開でパンダ中国行きに現実味も残る課題 「高齢のタンタン」中国行き期限は2022年12月末

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至れり尽くせりに見える都江堰基地だが、高齢のパンダにとって、長時間の渡航には危険が伴う恐れがある。タンタンとゆかりがある雄のパンダのガオガオ(高高)は、危うい状態に陥った。

ガオガオは野生で生まれ、推定2歳の1992年に四川省で捕獲され、2003年からアメリカのサンディエゴ動物園で暮らし、2018年に都江堰基地へ旅立った。1990年生まれとすると、28歳前後での中国行きだ。

CCRCGPの職員のリポート(『生物の科学遺伝』Vol.74 No.1、2020年1月)によると、ガオガオは都江堰基地に着いた後、長距離移動や環境の変化によって、採食量が激減。長時間の歩行や不安そうな様子を見せ、明らかなストレス状態になっていた。

そこで都江堰基地では、アメリカの飼育員と共同で飼育した。さらに、アメリカから持ってきた寝床や遊具、飼育用具を使って、馴染みのある室内環境を作り上げた。アメリカ製の人工飼料も与えた。するとガオガオのストレスは軽くなり、2週間後には摂食量がほぼ回復。体重も安定して、活動は正常になった。

ガオガオはサンディエゴで、タンタンの姉のバイユン(白雲)のパートナーだった。バイユンも、ガオガオが中国へ戻った約半年後の2019年5月にサンディエゴから都江堰基地へ行った。

パンダ タンタンの姉のバイユン
タンタンの姉のバイユン。中国へ旅立つ約2週間前の2019年4月にアメリカのサンディエゴ動物園で(筆者撮影)

ガオガオとバイユンはアメリカから中国へ渡ったため、日本から行くより長距離・長時間で、タンタンと条件が異なるが、参考にはなる。しかもタンタンは病気で公開すらできない状況だ。王子動物園は、タンタンの安全のために対策を練っている。

タンタンの中国行きは難しい?

王子動物園と連携協定を結んでいる大阪公立大学の島村俊介大学院獣医学研究科准教授は、タンタンが中国へ行く場合に考えられる危険性や対策などを盛り込んだ計画書の作成を手伝ったことがある。

タンタンが中国から来日した時は、2000年7月13日に臥龍を出発して、7月16日の夜、王子動物園に着いた。かなりの長旅だが、元気な4歳の時だからできたのだろう。

日中の専門家が2021年10月下旬にタンタンの病状を評価した結果、中国行きの期限は2022年12月末に延期された。あと3カ月ほどだ。

タンタンが中国へ行く際は、王子動物園から飼育員や獣医師が同行する可能性が高い。現状では、彼らは中国の最初の到着地で隔離され、基地までタンタンに同行できない。それを避けるには、タンタンより先に入国しておく必要があるが、そうすると王子動物園から中国までの区間をタンタンに同行できない。この点も中国行きが延期された一因だった。

また、成都直行便は、成田空港を使う便は運航を再開したが、王子動物園に近い関西国際空港からの運航再開は、まだだ。王子動物園は「タンタンの渡航は関空からでなければ厳しい」と見ている。

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