9歳までに学力の土台をしっかり固める学習法 計算ドリルや読書や作文では真の学力は育たない

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何種類もの展開図が立方体になっていく動画を見ます。なかには立方体にならないニセの展開図も混じっています。そのうえで、テキストの問題を解きます。展開図の一面にトカゲのキャラクターの絵が描かれていて、その向かい側の面に丸をつける問題です。頭の中で展開図を立方体にしなければいけませんから、結構難しい問題ですが、さきほどの動画を見て、要領をつかんでいるのでしょう。子どもたちはすらすらと解いていきます。

明るくて温かくて子どもたちに安心感を与える川口さんの見事な授業運びで、あっという間に60分が過ぎてしまいました。

勉強の教え方の常識を覆すメソッド

「子どもたちは、早く続きが見たいって言って帰っていきます。子どもたちは、週1回大好きなアニメーションを見て新しく学ぶことを楽しみにしているんです。勉強という感覚ではないんですね」と川口さんは玉井式の魅力を語ります。

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「普段高校受験の指導をしている教員が玉井式の授業を担当しても、普段とは違う授業形式だけでなく、生徒の感性も大きく違うのでとても苦労していました。そこでエディックでは玉井式専属の講師を育成しました」と言うのはエディック取締役の手嶋孝紀さん。玉井式は、従来の〝勉強の教え方〞の常識を覆すメソッドだというのです。

「『読解力をつけさせたいから読書をさせる。知らない言葉が出てきたら辞書を引いて調べさせる。記述式問題ができないから作文指導を徹底する』という一見正論に見える指導が子どもたちから考える力を奪っています。特に低学年のうちは、楽しみながら自由に読書をし、楽しみながら自由に書き、さらに日常生活で生き生きとした経験を積むことで『言葉からイメージする力』が磨かれるのです。頭の中で鮮明にイメージができればこそ、質の高い思考が可能になるし、自分の言葉で表現ができるようになります」という玉井さんの指摘は、玉井式国語的算数教室に通わないにしても、頭の片隅に置いておくといいでしょう。

おおたとしまさ 教育ジャーナリスト

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Toshimasa Ota

「子どもが“パパ〜!”っていつでも抱きついてくれる期間なんてほんの数年。今、子どもと一緒にいられなかったら一生後悔する」と株式会社リクルートを脱サラ。育児・教育をテーマに執筆・講演活動を行う。著書は『名門校とは何か?』『ルポ 塾歴社会』など80冊以上。著書一覧はこちら

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