表情分析家が解説、香川照之氏の謝罪時心理変化 悲しみが表出、2回目の謝罪時には大きな喪失感

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「申し訳ございません」(「申し訳ございませんでした」「お詫び申し上げます。すみません」等、類似表現含む)という言葉は、1回目の謝罪で2回、2回目の謝罪では3回、発せられています。

これら謝罪の言葉に伴い表れている優勢的な表情は、悲しみです。悲しみ表情は、「眉の内側が引き上げられる+口角が引き下げられる+上唇が引き上げられる」という動きから構成されます。

悲しみ表情・感情は、「大切なものを喪失したとき」「助けて欲しい」と思うときに生じます。1回目に比べ、2回目の方が、悲しみ感情に関連する表情筋の動きが強く表れています。これは、悲しみの感情が強く抱かれているということを意味します。時を経るごとに、失うもの・失ったものの大きさに気づいたゆえだと推測されます。

まとめますと、当初、数年前の出来事(性加害が起きたとされるのは、2019年7月のことです)がここまで大きな影響を引き起こすとは思っていなかったものの、自身の行く末がどうなるかやや心配。時が経つにつれて、事の重大性に気づき始めた、という心理であったと考えられます。

参考文献:大渕憲一(著)(2010)『謝罪の研究: 釈明の心理とはたらき』東北大学出版会

清水 建二 株式会社空気を読むを科学する研究所代表取締役

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しみず けんじ / kenji shimizu

1982年、東京生まれ。防衛省研修講師。特定非営利活動法人日本交渉協会特別顧問。日本顔学会会員。早稲田大学政治経済学部卒業後、東京大学大学院でメディア論やコミュニケーション論を学ぶ。学際情報学修士。日本国内にいる数少ない認定FACS(Facial Action Coding System:顔面動作符号化システム)コーダーの一人。微表情読解に関する各種資格も保持している。著書に『ビジネスに効く 表情のつくり方』イースト・プレス、『「顔」と「しぐさ」で相手を見抜く』フォレスト出版、『0.2秒のホンネ 微表情を見抜く技術』飛鳥新社がある。

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