他のニュースが世間の耳目を集めて、すっかり影が薄くなった感があるが、岸田文雄首相の看板政策は「新しい資本主義」であった。最近、その中のメニューの一つである「資産所得倍増計画」に動きがあった。8月31日に、金融庁のNISA(少額投資非課税制度)に関する税制改正要望事項が発表されたのだ。
NISAの「抜本的改革」とは?
特に「NISAの抜本的拡充」について書かれている「新しい資本主義実現会議」の会議資料(4ページを参照)の中には、グランドデザインとうたった、おそらくは将来の報告書のドラフト的な役割を果たす長文の文書がある。その中では、NISAについては「抜本的改革」とあった。
この文書の中では、関係筋から拝聞するに、岸田首相は「資産所得倍増」という言葉を、財務省や金融庁、税制関係の検討の当事者などに相談せずに口走ったらしい。とはいえ、一国の総理の言葉だ。政府として、何もしないわけにはいくまい。
では、NISA制度の抜本的改革として何が行われるのだろうか。金融庁は、今回のNISA見直しの機会に、巷間噂に上っている非課税運用枠の拡大だけでなく、NISA制度全体を作り替えることを狙っているようだ。今のNISAは制度が複雑だ。制度がシンプルで使いやすいものになって、さらに拡充されるのであれば、多くの人の賛意を得られるだろう。金融庁はそこを狙ったようだ。意欲的な改革案だ。
今回のNISA制度に関する要望事項の中で、もっとも画期的な点は、非課税期間の「無期限化」と制度の「恒久化」の2つを目指していることだろう。あわせて、一般NISAとつみたてNISAの2つの制度を統合して、わかりやすくする狙いもあるようだ。
順に見ていこう。
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