2つの入り口いずれに関しても、金融機関や運用会社の側は高い手数料が取りやすい多種類の商品を入れたいと思っているはずだし、他方、投資家にとっての得失を考えると、多分配型投信やテーマ型投信などは除外してもらったほうが不適切なセールスにはまったり、商品選択を間違えたりするリスクが小さくなる点で好ましい。
一つの試金石は多分配型の投資信託だろう。利用枠拡が期待される新しいNISA制度は高齢者も利用可能なので、「年金を補完する分配金で、自分年金を作りましょう」といったセールストークで多分配型の投信を売りやすいはずだ。
投資家にとって、正しくは、分配金がゼロか小さいかで手数料の安い運用商品で運用して、将来お金が必要な場合に部分的な解約でお金を作ることが適切なはずだ。正しい金融マンは、高齢顧客にこうしたアドバイスをするべきだろう。
しかし、金融業者側では「高齢者には分配金ニーズがある」と言い張りそうだし、現実に、分配金をセールスポイントにして高齢者に投信を売るマーケティングはある程度成功しそうだ。セールスを通じた「高齢者への普及」を取るか、あるいは「正しい運用の普及」を取るか、興味深い選択だ。
最終的に決着した形で、多分配型の投信が除外されていれば「金融庁の良識派の勝ち」、ごっそり採用されるようであれば「金融機関の勝ち」、という判定ができそうだ。
また、非課税期間が延びることで、投資対象商品のスイッチングを認めるのか否かがもう一つの注目点としてあげられる。投資元本ベースで総枠と内数としての別枠の管理をしながら、時々の時価で商品がスイッチできるように管理するのは少々複雑だが、投資環境に適応するうえでも、運用商品間の競争を促すうえでもスイッチングはできるほうが好ましい。スイッチングを認めた場合、金融機関によってシステム対応に時差が生じるかもしれないが、結局は対応することになるのではないだろうか。
新しいNISA制度の正しい使い方とは?
今回、もしNISAの制度変更が行われると、これまで2024年にスタートが予定されていた通称「新NISA」は日の目を見ないことになる。
では、現在のつみたてNISA、一般NISA、そして新NISA、それにこれから決まる「新しいNISA」で、適切な運用方法が異なるかというと、そのようなことはない。実は、どの制度にあっても最適な運用方法・運用対象は同じである。
NISAの資金の運用を考える際に、重要な原則を4つ紹介しよう。
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