非課税期間の無期限化は、2つの点で画期的だ。
長期投資へのインセンティブが発生する
まず、これまでの一般NISAで5年、つみたてNISAで20年という非課税運用可能期間はそれなりに長期だが、必ずしも十分ではなかった。これらをまとめて無期限にすることを金融庁は要望している。実現すると、より長期の投資に対するインセンティブが発生するので好ましい。
また、期限がなくなることによって、これまでのNISAをいささか複雑にしていた「ロールオーバー」(期間延長)の手続きが必要なくなることの意味も大きい。投資した年ごとに、投資を管理しなければならない面倒からも解放される。
貯蓄と投資は、最終的には老後の生活に備えて行われるわけだから、いったん投資した商品の保有期間が30年、40年に及ぶことも珍しくはないはずだし、余計な売り買いをしないで長期で投資することは有効だ。長期投資に耐える運用商品(内容的に幅広く分散投資されていて、手数料が安い商品)を選ぶことは望ましい。
また、今回の要望案では、つみたてNISAと一般NISAが、どちらかというと前者が後者を包摂するような形で統合される。例えば、全体の非課税枠を「総合NISA枠」と名付けて一人2000万円としよう(数字については後で論じるが、これは仮置きだ。以下同様)。
この総枠への言わば「お金の入り口」が2つあって、1つ目が言わば「つみたてNISA口」だ。年間に例えば60万円といったペースで積み立て投資していくことが可能で、投資した元本の累計が2000万円になると打ち止めになる。投資家はこの非課税運用枠を無期限に使うことができる。
もう1つの入り口は言わば「一般NISA口」だ。こちらは年間に例えば160万円といった比較的まとまった金額で投資することができて、認められる投資対象は「つみたてNISA口」よりも幅が広い。ただし、この「一般NISA口」の利用上限額(言わば「一般NISA枠」だが、金融庁の資料では「成長投資枠(仮称)」とされている)は先ほどの2000万円の「内数」として設定されて、例えば上限が800万円となる。今の一般NISAに近いものを、枠を拡充しながら残すイメージだ。
なお、いずれで行われた投資であっても、同じNISAなので部分的にでも全部でも自由に解約・換金することができる。そして、その後に「総合NISA枠」が2000万円に達するまで、「つみたてNISA口」か「一般NISA口」かのいずれかから再び投資を追加することができるような制度を金融庁は考えているようだ。
一般論として長期投資が望ましいとはいえ、人生でお金が必要な場合はある。柔軟に換金できることは現在のNISAでも長所だ。これを維持しながら、一人が利用できる総枠は一律に同じなので公平性が保たれる。
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