ASUSの強みは「絶妙な製品投入タイミング」 創業会長が語った勝ち残りのための秘策

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――日本でも低価格のMVNOが定着し始め、それにともなってSIMフリーの低価格スマートフォン市場が生まれています。そうした日本市場の中でも、ASUSのZenFoneは大きな注目を集めました。

モバイル機器メーカーならば、今のメガトレンドの中でスマートフォンに取り組まない手はありません。それは以前から気付いていたことでした。15年前、我々はまだマザーボードが事業の主軸でしたが、国立の人材センターから携帯電話やスマートフォンを研究開発するエンジニアを雇い入れ、特許を所得してきました。今、それがASUSの強みにもなっています。

多くの研究開発を行ってきたものの、昨年になるまでは製品化や自社ブランドでの展開を急ぐほどの切迫感が市場にはなかったため、製品にしようとはしませんでした。その前の年は、Nexus 7がたくさん売れていたこともあり、スマートフォンは後回しになっていたのです。しかしスマートフォン市場も中国、インドのメーカーが参入し、イノベーションのパイプラインに、いよいよ入っていくべきと考えました。

スマートフォン市場は急拡大し、とくに中国市場は大きく伸びました。ハイエンド製品からローエンド製品まで、どれも価格性能比が大きく向上してきています。そこで開発スピードを活かし、最新のトレンドをいち早く導入して参入に成功しました。日本のメーカーとは異なる軸での競争力を持つ我々としては、最適なタイミングだったと思います。

中国の新興企業とどう戦うか

――スマートフォン、タブレット、いずれの市場も成熟期に向かっているように見えます。この事業領域において、ASUSはどのような強みを発揮できると考えていますか。その過程の中で日本企業との組めることもあるのでは?

もっとも大きな挑戦は、中国の新興メーカーにどのように立ち向かうかです。この1年半の問題は、価格性能比が大きく変化したことで、消費者が商品を選ぶ基準が変わってきたことでした。ネットサービスや通信サービスなどと組み合わせたフリーミアムのビジネスモデルが多様化し、消費者の意識が変化しています。シャオミなどが代表例ですが、単に価格が安いだけでなく、価格対性能比が上がって絶対的な金額も安くなったことで価値観が変わりました。

その結果、アップルは大きな利益を上げていますが、それ以外のメーカーはサムスンも含めて大きな問題を抱えています。差異化を求めて防水やカメラ性能を向上させていますが、どこまで訴求できるかというと難しい。

では何が重要かと言えば、それはタイミングです。世の中で流行っている、注目されている要素を、絶好のタイミングで市場に投入し、誰もが気軽に使える、ワンランク上の品質や機能を提供する。そこにASUSの価値があると思います。もちろん、中国のメーカーもすぐに追いついてくるでしょう。そこで必要なのが、優れたユーザー体験です。ユーザー体験をきちんと作り込むことと、製品投入のタイミング重視は相反する要素ですが、それをやり切ることで競争力を持てると思います。

日本の企業は、特に品質に対する考え方が尊敬できます。我々自身が競争力を保つためにも、日本のパートナーは重要な存在です。

本田 雅一 ITジャーナリスト

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ほんだ まさかず / Masakazu Honda

IT、モバイル、オーディオ&ビジュアル、コンテンツビジネス、ネットワークサービス、インターネットカルチャー。テクノロジーとインターネットで結ばれたデジタルライフスタイル、および関連する技術や企業、市場動向について、知識欲の湧く分野全般をカバーするコラムニスト。Impress Watchがサービスインした電子雑誌『MAGon』を通じ、「本田雅一のモバイル通信リターンズ」を創刊。著書に『iCloudとクラウドメディアの夜明け』(ソフトバンク)、『これからスマートフォンが起こすこと。』(東洋経済新報社)。

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