ASUSの強みは「絶妙な製品投入タイミング」 創業会長が語った勝ち残りのための秘策

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――昨年、タブレット市場は初めて金額ベースでマイナス成長になりました。今後は生産性を高める道具としてのタブレットに成長余力があると見ているのでしょうか。

そう考えて、ASUSはタブレットとPC、両方の用途で使いやすい、2-in-1と呼ばれるジャンルの製品開発に投資をしています。金額ベースでのマイナス成長となっている主な理由は、コンテンツプレーヤとしてのタブレットの伸び悩み、すなわちデジタルメディアを消費する道具というだけでは、充分に満足できる需要を生み出せないということでしょう。したがって、今後は生産的な仕事をすることを意識したタブレットや2-in-1が伸びるでしょう。

ASUSの製品としては、Windowsは個人が仕事の道具として使うことを意識して大画面の製品を揃えています。Androidはもっとエンターテインメント寄りであることを意識しています。

――スマートフォンのZenFoneシリーズにも力を入れ始め、ASUSの売り上げとしても大きな比率を占めるようになっています。パソコン、タブレット、スマートフォンの各市場におけるメガトレンドを、どのように読み取っていますか。

それぞれのカテゴリに新しいメーカーが参入し、競争することでどの市場も変化しています。スマートフォンは大画面化や大画面を活かした使い方を提案し、結果的にファブレット化(タブレットとスマートフォンの中間的端末のこと)しています。また、パソコンはタブレットの手軽さとノートパソコンの高い生産性を両立させるために2-in-1に向かっています。この両方に挟まれて、タブレット市場が潰されてきています。タブレットに求めるニーズを、他の二つの市場がニーズを満たしてしまっているからです。

マイクロソフトは変わり始めている

――今年年末商戦には登場すると言われるWindows 10は消費者向けパソコン市場の再活性化に寄与すると考えていますか。

Windows 10が登場する前から、すでにマイクロソフトは変わり始めています。新しいCEOはWindowsを直接販売するのではなく、消費者からはフリーミアムであるように見せて、その上で自社のさまざまな製品を利用する”加入者”を獲得することで事業を成立させりょうという考え方です。このためにWindows 10は初めて無償アップグレードを実施します。

新CEOのサティア・ナデラはマイクロソフトに新しい考え方を徹底して注入しました。モバイル、クラウドでのユーザー体験がもっとも重要であり、古い考え方は捨てなければならないと社内に浸透させています。もちろん、個々の戦略や製品も重要ですが、マイクロソフトの組織全体にこうした考え方が浸透していることが、マイクロソフトの変化を促していると思います。

たとえば主力製品のOfficeをiOSやAndroidでも使えるようにするといったことですが、もうひとつの注目点は”スピード”です。かつて、Windows 95から98への変化には3年もかかりました。しかし今どき、3年もかけて基本ソフトを開発していたのでは、コンセプトが陳腐化してしまいます。

その間、新しいニーズが生まれていても対応できません。クラウドになれた消費者は、今すぐにでも新たに生まれているサービス、アプリケーションを使いたい。そこで効果的に他社のサービスやプラットフォームも取り込み、部分的にはオープンソースも取り入れてWindowsを変えていこうとしています。

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