ASUSの強みは「絶妙な製品投入タイミング」 創業会長が語った勝ち残りのための秘策
――その中でASUSは、どのようにして前進していくのでしょう。
基本的な手法は昔から変わっていません。世の中の変化全体、トレンドに沿って製品の企画や開発を行うというのが、我々の哲学です。顧客にとって重要なことは、製品から何を感じるか、ユーザー体験です。顧客満足を上げるために、自分たちにできるベストは何かを考えることです。
どんなに優れた技術を持っていても、市場からの声に耳を傾けて、顧客が喜ぶ商品へと進化さえなければ価値を高めることはできません。そこでここ数年、ASUSは”デザインシンキング”という考え方を徹底しています。これは、顧客がその製品を使う際、どんなことを感じるのか、考えるのか。それを意識した上で、すべての社員が業務を遂行するという考え方です。
アップルが戦いのルールを変えた
――具体的にASUSの製品はどのように変化していますか。
かつてのパソコン、マイクロソフトとインテルがコンピューティングの未来を担っていたウィンテル時代、顧客満足を引き上げる要素はとてもシンプルでした。それはマイクロプロセッサが動作する周波数であり、メモリ量であり、通信速度でした。それらの数字こそが、消費者にとってもメーカーにとっても重要で、業界のイノベーションはマイクロソフトとインテルに任されていました。
では、この2社だけにイノベーションを任せてしまうことが正しかったかというと、ベストとは言えませんでした。たとえば、Windows Vistaは(内部を刷新したものの)消費者にとってベストな体験ではありませんでしたよね。一方、アップルはそうしたスペックの数値とは違う部分で勝負し、ユーザー体験を最適化することで戦いのルールを変えた。
ASUSの製品はかつて、ウィンテル体制の元に顧客満足を追いかけていました。これを”カスタマハピネス1.0”の時代とするなら、今は”カスタマハピネス2.0"の時代。単純にスペックを向上させるだけでなく、箱を開けてから利用シーンに至るまで、あらゆる部分での体験を製品全体でデザインし、顧客満足度を最大限に高めています。
具体的には製品の美しさ、仕上がりの良さだったり、音質の良さ、触った感触の良さ、それ以外のあらゆる感性に訴える部分です。それはハードウェアの見た目だけでなく、ディスプレイとして使う液晶や、内蔵カメラの性能など多岐にわたります。あらゆる要素を美しくまとめなければ顧客満足を高めることはできません。
また、”パフォーマンスや性能”に関しても、その定義は変化しています。処理能力が高いことはもちろん素晴らしいのですが、それに加えて応答の速さ、すなわち俊敏性が求められています。
――Gfkによると2010年に685ドルだったタブレットの平均売価は294ドル、今年は259ドルまで低下すると予測しています。今やASUSの主力商品にもなってきていますが、今後のタブレット市場をどう見ていますか。
まずAndroidタブレットですが、その主な用途はメディア視聴なんです。動画などののコンテンツを愉しむ方が多い。そういったメディアプレーヤとしての使い方が中心のコンピュータは、どうしても価格が下がってしまいます。サイズの大きなタブレットを売ろうと思っても、みんななかなか買ってくれません。これは新興国だけの特殊な事情ではなく、グローバルな傾向です。
一方、Windowsタブレットは生産的な作業に使われることが多い製品です。適応する範囲が広く、道具としての完成度が求められます。しかし、タブレットとして使う場合には、アプリがひじょうに少ない。大きく改善されていますが、アプリの充実には時間がかかると見ています。
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