アカデミー賞獲った女性が語る「日本映画の盲点」 日本の若い人たちはもっと貪欲に生きるべきだ

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映画は億単位のお金が動く、非常に競争が激しい世界です。甘い意識では作れません。そのことをまず、しっかり意識したうえで「原作ものしか撮らせてもらえない」と嘆くのではなく、社会に対する観察を始めることが大切です。

日本社会においても、格差の問題が取り沙汰されていますが、やはり中産階級が圧倒的に多い。他国に比べれば何の障害もない社会です。なので、社会に対する問題意識は強く持てないのかもしれません。

例えば、カンヌ国際映画祭のパルムドールとアメリカ・アカデミー賞の作品賞のダブル受賞をした『パラサイト 半地下の家族』(2019)のような作品は韓国の階級社会を前提にしています。そうした意味では、日本に引きの強い脚本を書ける人がいないのかもしれませんね。

――大作映画ではない、いわゆるインディーズ作品が、海外の映画祭で評価されて、逆輸入されて日本で知名度が上がっているような例もあります。

吉崎:日本の映画界が日本の若い才能をプロモーションをする気がないから、逆輸入モデルになるのではないでしょうか。そういう意味では逆輸入の流れは必然かもしれません。

ただ、海外に出たかったら語学をまず習得しなくてはなりません。それは生易しいことではない。やはり「海外ありき」は本末転倒ではないでしょうか。

まずは日本の観客に響くのかを念頭に置いて、「世界的に売れる」という戦略を持った脚本をセットアップする必要があると思います。

いい映画を作るために必要なこと

――いい映画を作るために必要なことはどのようなことなのでしょうか。

吉崎:クラシック映画をたくさん見ることです。私がイタリアの映画学校で1番学んだことはたくさん映画を観たこと。1年間に400本ぐらい観ました。最初わからなくても、2回、3回見ることです。それで映画の基礎を身に付けることです。

それから、脚本を書いたら恥ずかしがらずに人に見せること。若い人の作った脚本を読むこともありますが、とにかく、批評されることに臆病になっている。自分の存在がなくなるように感じてしまうようです。しかし仲間同士の関係だけで映画は作れません。

やはり、尊敬する人の意見を取り入れるべきですよね。日本の監督も若い人たちのシナリオを読んで、批評するようなボランティアをすればいいと思っています。

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